<百書店大賞とは>
(広義の)本屋が選んだ大賞本で作る一つの本棚です。
「大賞」といっても順位付けはしません。募集作品はみんな「大賞」として、いち応募につき1冊づつ並べた売り場を作ります。複数冊の推薦があればたくさんの冊数が並ぶ、という感じです。
なぜかって、それが「本屋」だと思うから。いろんな本がいろんな理由でそこにあり、その一冊づつに語れることはあるけれど、その「本屋」らしさは、売り場全体で印象づけられるものだと思うからです。平積みのあの本も、棚に1冊だけささっているその本も、すべてがあって一つの「本屋」です。
「大賞」からこぼれ落ちるものを、「大賞」のまますくい上げる。百書店大賞は、「本屋」がみんなで「本屋」を作るお祭りです。
・下記の書影から選書した本屋さんのサイトへ移動できます。
・こちらの本たちは、H.A.Bookstoreおよび双子のライオン堂の店舗/WEBSHOPで購入できます。(営業日などは各店舗のサイトをご確認ください。)
・「百書店大賞2020」記念冊子も販売中です。参加書店(一部)とH.A.Bookstoreおよび双子のライオン堂でお買い求め可能です。

ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集
斉藤倫、福音館書店
おじさんと子どものやりとりがみずみずしくて、心ひかれる。そして、本から目を上げてみると、会話のすべてが詩になっている。二人の関係は最初はよく分からないのだが、こうかな、と推測しながら読むと少しずつ見えてくる。その関係も美しい。文中で取り上げられてる長田弘の詩がすごくて、とにかく読んでいて心が震える経験をした。ぜひ多くの人に読んでほしい。
机屋/机龍之介/京都を中心に時々一箱で活動しています。昨年から「まいにち机」として毎日本の感想をツイートしています。まとめた冊子もⅢまで販売中。
おじさんと子どものやりとりがみずみずしくて、心ひかれる。そして、本から目を上げてみると、会話のすべてが詩になっている。二人の関係は最初はよく分からないのだが、こうかな、と推測しながら読むと少しずつ見えてくる。その関係も美しい。文中で取り上げられてる長田弘の詩がすごくて、とにかく読んでいて心が震える経験をした。ぜひ多くの人に読んでほしい。
机屋/机龍之介/京都を中心に時々一箱で活動しています。昨年から「まいにち机」として毎日本の感想をツイートしています。まとめた冊子もⅢまで販売中。

街は記憶する
上通商栄会 編 上通商栄会
熊本市の上通は空襲で焼けなかったので、古い店がいくつも残っている。本書は、いまの先々代ほどにあたる人たちの、聞き書きである。面白いのは、聞き手の「記憶がなくなるとき、存在もなくなることに気づいて慌てて先輩の」話を聞いて回った切実さと、語り手たちの悠悠とした語り口との、落差である。たとえば上通商店街が水没した1953年の大水害で、帽子屋の3代目はやっとのことで自分の店に辿り着くが、「どうにも手のつけようがないので、そこで諦めて、近くの知り合いの洋品店に上がり込み、酒を五合ばかり飲みました……商店街の電気もネオンもそのまま灯っていました。水に映ったり、水中でキラキラと光ったりして、きれいでしたね」と当時の惨状を語る。街はそこで生を営む人たちの人柄によってつくられ、そこにいる人を好きになることでその街を好きになることを、本書は教えてくれる。
0円本屋イエネコのいえ/望月モンド/安芸津は海沿いの町です。私設の公共施設の中にある棚が本屋です。全て0円。訪れる人がお客で店主です。/広島県東広島市安芸津町三津4185‐1
熊本市の上通は空襲で焼けなかったので、古い店がいくつも残っている。本書は、いまの先々代ほどにあたる人たちの、聞き書きである。面白いのは、聞き手の「記憶がなくなるとき、存在もなくなることに気づいて慌てて先輩の」話を聞いて回った切実さと、語り手たちの悠悠とした語り口との、落差である。たとえば上通商店街が水没した1953年の大水害で、帽子屋の3代目はやっとのことで自分の店に辿り着くが、「どうにも手のつけようがないので、そこで諦めて、近くの知り合いの洋品店に上がり込み、酒を五合ばかり飲みました……商店街の電気もネオンもそのまま灯っていました。水に映ったり、水中でキラキラと光ったりして、きれいでしたね」と当時の惨状を語る。街はそこで生を営む人たちの人柄によってつくられ、そこにいる人を好きになることでその街を好きになることを、本書は教えてくれる。
0円本屋イエネコのいえ/望月モンド/安芸津は海沿いの町です。私設の公共施設の中にある棚が本屋です。全て0円。訪れる人がお客で店主です。/広島県東広島市安芸津町三津4185‐1

パンティオロジー
秋山あい、集英社インターナショナル
その日・その時、履いている「パンティー」で気持ちがあがったり、リラックスしたり、色っぽくなったりするよね。この本には、アーティスト・秋山あいさんが取材をした33人の女性たちの99枚のパンティーの物語が、秋山さんのあったかい絵とともに紹介されているの。考現学にも通ずるアートプロジェクト。今和次郎も新しい視点だ! と感動しているかもね。小さな布の中に、こんなにたくさんの哲学が詰まっていることにびっくりするし、それぞれの女性の「生き方」に元気がもらえる。アート、考現学、そして女性たちのショートエッセイかつ、哲学。たくさんの化学反応が起こっている。さあ、わたしもお出かけ前に着替えて気分をアゲようかしら。
本屋しゃんの本屋さん/なかむらしょうこ/本好きとアート好きはつながると思うの。そんな想いを胸に、アーティストのZINEやオリジナルブック/グッズを届ける本屋さんです。
その日・その時、履いている「パンティー」で気持ちがあがったり、リラックスしたり、色っぽくなったりするよね。この本には、アーティスト・秋山あいさんが取材をした33人の女性たちの99枚のパンティーの物語が、秋山さんのあったかい絵とともに紹介されているの。考現学にも通ずるアートプロジェクト。今和次郎も新しい視点だ! と感動しているかもね。小さな布の中に、こんなにたくさんの哲学が詰まっていることにびっくりするし、それぞれの女性の「生き方」に元気がもらえる。アート、考現学、そして女性たちのショートエッセイかつ、哲学。たくさんの化学反応が起こっている。さあ、わたしもお出かけ前に着替えて気分をアゲようかしら。
本屋しゃんの本屋さん/なかむらしょうこ/本好きとアート好きはつながると思うの。そんな想いを胸に、アーティストのZINEやオリジナルブック/グッズを届ける本屋さんです。

せいいっぱいの悪口
堀静香
堀静香さんの言葉には、生きることへの好奇心と優しい眼差し、驚異と畏怖が詰まっている。堀さんはこう書く。〝摂理はおそろしい。だってそこに知恵も権力も意味をもつことはない。もっとおそろしい摂理は「生きている者みないつかは絶対死ぬ」ことである。「いつか死ぬ」なんて、そんなばかな。〟生きることは常に死と隣り合わせだ。だからこそ、私達は運命だからなんかじゃなくて、確固たる意志をもって隣人を愛し、詩を志す。ンバッと羽を広げる孔雀の存在におののきながらも、日常にきらめきを見出し慈しむ知恵が、この作品には詰まっている。さあ、今日も明日も生きていこう。
北欧フェミニズム入門/枇谷玲子/下北沢のBookshop travellerの間借り本屋です。
堀静香さんの言葉には、生きることへの好奇心と優しい眼差し、驚異と畏怖が詰まっている。堀さんはこう書く。〝摂理はおそろしい。だってそこに知恵も権力も意味をもつことはない。もっとおそろしい摂理は「生きている者みないつかは絶対死ぬ」ことである。「いつか死ぬ」なんて、そんなばかな。〟生きることは常に死と隣り合わせだ。だからこそ、私達は運命だからなんかじゃなくて、確固たる意志をもって隣人を愛し、詩を志す。ンバッと羽を広げる孔雀の存在におののきながらも、日常にきらめきを見出し慈しむ知恵が、この作品には詰まっている。さあ、今日も明日も生きていこう。
北欧フェミニズム入門/枇谷玲子/下北沢のBookshop travellerの間借り本屋です。

薪を焚く
ラーシュ・ミッティング 、訳)朝田千惠、晶文社
北欧の冬は寒い。何千年もの間、北欧の人々にとって重要だったのは、何をおいてもまず薪だった。その消費量は、単に多いのではない。膨大なのだ。現代を生きる彼らが薪に求めるのは、決してノスタルジーではなく、現実的なエネルギーだ。他の人々と分け合うことが可能で、残りの量を見て安心感を得ることができる。自然の中での手仕事に喜びをおぼえ、生きた炎の温もりに豊かさを感じる。ノルウェーの薪人たちを見ればわかる。それはつまり、暖をとる以上の何かなのだ。音、香り、手触り。人々は、焚き火の持つ太古からの魔力に惹きつけられるようだ。「一度目は木を伐るとき、そして二度目は薪を焚くとき、薪は二度、身体を暖めてくれる。」
ひるねこBOOKS/小張隆/猫の本や、絵本・児童書、暮らしの本、アート、北欧関連本など。古書をメインに新刊も販売しています。
北欧の冬は寒い。何千年もの間、北欧の人々にとって重要だったのは、何をおいてもまず薪だった。その消費量は、単に多いのではない。膨大なのだ。現代を生きる彼らが薪に求めるのは、決してノスタルジーではなく、現実的なエネルギーだ。他の人々と分け合うことが可能で、残りの量を見て安心感を得ることができる。自然の中での手仕事に喜びをおぼえ、生きた炎の温もりに豊かさを感じる。ノルウェーの薪人たちを見ればわかる。それはつまり、暖をとる以上の何かなのだ。音、香り、手触り。人々は、焚き火の持つ太古からの魔力に惹きつけられるようだ。「一度目は木を伐るとき、そして二度目は薪を焚くとき、薪は二度、身体を暖めてくれる。」
ひるねこBOOKS/小張隆/猫の本や、絵本・児童書、暮らしの本、アート、北欧関連本など。古書をメインに新刊も販売しています。

痴漢とはなにか 被害と冤罪をめぐる社会学
牧野雅子 エトセトラブックス
女性解放運動家の山川菊枝は、1928(昭和3)年、女性専用車両の導入を新聞で知り、次のように述べたという。「日本男子の性道徳の水準を表明するものとして、世界の前に誇示せらるるに足るものであらう」。21世紀の日本で女性専用車両は日常の風景になった。山川が嘆いた当時と比べて、日本男子の性道徳の水準は上がったのか下がったのか。
Readin’Writin’ BOOKSTORE/落合博/田原町の本屋です。肉屋でもあり、魚屋でもあり、八百屋でもあり、乾物屋でもあります。
女性解放運動家の山川菊枝は、1928(昭和3)年、女性専用車両の導入を新聞で知り、次のように述べたという。「日本男子の性道徳の水準を表明するものとして、世界の前に誇示せらるるに足るものであらう」。21世紀の日本で女性専用車両は日常の風景になった。山川が嘆いた当時と比べて、日本男子の性道徳の水準は上がったのか下がったのか。
Readin’Writin’ BOOKSTORE/落合博/田原町の本屋です。肉屋でもあり、魚屋でもあり、八百屋でもあり、乾物屋でもあります。

菜の花の沖縄日記
坂本菜の花 ヘウレーカ
石川県から単身、沖縄の珊瑚舎スコーレというちょっとユニークな学校に入学した15歳の少女の3年間+α。読んでいると沖縄の大人としてハッとさせられ恥ずかしくなります。自分は日々学んでいるだろうか? 自分の頭で考えているのだろうか? 沖縄県内外・学生さん・親御さん、教育に携わる人、いろいろな方に読んで欲しい1冊。
book cafe Bookish/あすか/沖縄にあるブックカフェです。新刊(ちょこっと)と古書・雑貨の販売も行っています。
石川県から単身、沖縄の珊瑚舎スコーレというちょっとユニークな学校に入学した15歳の少女の3年間+α。読んでいると沖縄の大人としてハッとさせられ恥ずかしくなります。自分は日々学んでいるだろうか? 自分の頭で考えているのだろうか? 沖縄県内外・学生さん・親御さん、教育に携わる人、いろいろな方に読んで欲しい1冊。
book cafe Bookish/あすか/沖縄にあるブックカフェです。新刊(ちょこっと)と古書・雑貨の販売も行っています。

恐竜まみれ
小林快次、新潮社
〝ファルコン・アイ〟の異名をもち、数々の大発見を成し遂げてきた日本を代表する古生物学 者、小林快次。恐竜の発掘現場とはどんなものなのか? 大発見の裏にある、本人しか知らない 背景とは? 恐竜ブームに湧く日本人に伝えたい、筆者の思いとは? 科学館に展示されている恐 竜たちが土の下から出てくるまでに、どれだけの苦労がともなうのかを垣間見れる、今一番読 んでおきたい研究者の記録です。普段科学関係の本ばかり読んでいるのですが、「恐竜まみ れ」は最近の科学関係本の中でも特に読みやすく、幅広くおすすめできる1冊。恐竜博2019 が大変盛り上がったので、古生物に興味が出てきた方も少なくないはず!
青鹿文庫/かもしか/「あおししぶんこ」と読みます。生物学や科学全般の本を携え、新潟の 一箱古本市などにたまに出現。Twitterでおすすめ科学本紹介したり。
〝ファルコン・アイ〟の異名をもち、数々の大発見を成し遂げてきた日本を代表する古生物学 者、小林快次。恐竜の発掘現場とはどんなものなのか? 大発見の裏にある、本人しか知らない 背景とは? 恐竜ブームに湧く日本人に伝えたい、筆者の思いとは? 科学館に展示されている恐 竜たちが土の下から出てくるまでに、どれだけの苦労がともなうのかを垣間見れる、今一番読 んでおきたい研究者の記録です。普段科学関係の本ばかり読んでいるのですが、「恐竜まみ れ」は最近の科学関係本の中でも特に読みやすく、幅広くおすすめできる1冊。恐竜博2019 が大変盛り上がったので、古生物に興味が出てきた方も少なくないはず!
青鹿文庫/かもしか/「あおししぶんこ」と読みます。生物学や科学全般の本を携え、新潟の 一箱古本市などにたまに出現。Twitterでおすすめ科学本紹介したり。

台湾レトロ氷菓店
ハリー・チェン グラフィック社
台湾各地で古くから続く氷菓店を紹介している本ですが、単なるグルメガイド本ではありません。丁寧な取材から、店主やおかみさんの人柄や仕事ぶりやこだわりや、これまで歩んできた人生、そして台湾という国が駆け抜けた戦後から経済成長期の激動の時代すらも感じさせてくれます。レトロな写真の可愛らしさに惹かれて読みましたが、台湾の街中でちいさなお店を営んできた人々の人生の物語がしみじみと味わい深く、また台湾という国の近代の移り変わりをほんの少しだけでも垣間見ることができたように思いました。
一夜文庫/夢宇津々/寝る前の読書が好きな素人が、枕元にあった本を間借り棚や一箱古本市で並べています。
台湾各地で古くから続く氷菓店を紹介している本ですが、単なるグルメガイド本ではありません。丁寧な取材から、店主やおかみさんの人柄や仕事ぶりやこだわりや、これまで歩んできた人生、そして台湾という国が駆け抜けた戦後から経済成長期の激動の時代すらも感じさせてくれます。レトロな写真の可愛らしさに惹かれて読みましたが、台湾の街中でちいさなお店を営んできた人々の人生の物語がしみじみと味わい深く、また台湾という国の近代の移り変わりをほんの少しだけでも垣間見ることができたように思いました。
一夜文庫/夢宇津々/寝る前の読書が好きな素人が、枕元にあった本を間借り棚や一箱古本市で並べています。

世界
ポエマ・ナイヴネ、チェスワフ・ミウォシュ、
訳)つかだみちこ・石原耒、港の人
第二次世界大戦中ナチス占領下のワルシャワで地下出版。日本では翻訳者や出版社の尽力で2015年にはじめて出版。副題「純朴な詩篇」。あえて知らされなければ戦時下に書かれたとは思われないだろう。自然や日常の風景、父から子どもへの語り、信仰、愛、希望、恢復…について綴られた20編の詩は美しく繊細、かつ静かな力強さを持つ。私は世の中や自分のあり様に心ざわめくとき、この詩集を手にとり声を出して読む。深呼吸をしたときみたいに心が静まり、大事なことが感じられるようになる気がする。白地に文字のみシンプルな装幀が美しい。坂口恭平さんもおすすめの一冊。
みどりのほんや/いとうようこ/下北沢 Bookshoptraveller(棚)、古本市等に出店中。新刊も少し取扱いはじめました。
第二次世界大戦中ナチス占領下のワルシャワで地下出版。日本では翻訳者や出版社の尽力で2015年にはじめて出版。副題「純朴な詩篇」。あえて知らされなければ戦時下に書かれたとは思われないだろう。自然や日常の風景、父から子どもへの語り、信仰、愛、希望、恢復…について綴られた20編の詩は美しく繊細、かつ静かな力強さを持つ。私は世の中や自分のあり様に心ざわめくとき、この詩集を手にとり声を出して読む。深呼吸をしたときみたいに心が静まり、大事なことが感じられるようになる気がする。白地に文字のみシンプルな装幀が美しい。坂口恭平さんもおすすめの一冊。
みどりのほんや/いとうようこ/下北沢 Bookshoptraveller(棚)、古本市等に出店中。新刊も少し取扱いはじめました。

純真なエレンディラと邪悪な祖母の信じがたくも痛ましい物語 ガルシア=マルケス中短篇傑作選
G・ガルシア=マルケス 著、野谷文昭 訳 河出書房新社
過酷で、猥雑で、幻想的で、とても豊かな物語がここには溢れています。各年代の代表作を集めた構成とアップデートされた新訳で、ガルシア=マルケス未読の読者への恰好の入門書でありつつ、鼓直・木村栄一らの旧訳に馴染んだ読者でも新鮮な読書体験ができる一冊。代表作の長編『百年の孤独』は読み通すのにかなり体力を要しますが、本書なら大丈夫。是非ガルシア=マルケスの多彩な魅力に触れてください。
ワグテイル ブックストア/山本貴史/横浜・元町の小さな古本屋です。海外文学多めです。買取はじめました。春から営業日増やします。
過酷で、猥雑で、幻想的で、とても豊かな物語がここには溢れています。各年代の代表作を集めた構成とアップデートされた新訳で、ガルシア=マルケス未読の読者への恰好の入門書でありつつ、鼓直・木村栄一らの旧訳に馴染んだ読者でも新鮮な読書体験ができる一冊。代表作の長編『百年の孤独』は読み通すのにかなり体力を要しますが、本書なら大丈夫。是非ガルシア=マルケスの多彩な魅力に触れてください。
ワグテイル ブックストア/山本貴史/横浜・元町の小さな古本屋です。海外文学多めです。買取はじめました。春から営業日増やします。

エクソフォニー 母語の外へ出る旅
多和田葉子、岩波書店
日本語とドイツ語、二つの言語を用いて長年創作活動を行っている多和田葉子さんが、日本語からもドイツ語からも離れた地域で接する見聞の数々は、世界は、ことに文学の世界は多様さに満ちているけれど、単純に国境で括るものではないことを我々に伝えてくれる。それにしても多和田さんの諸言語への好奇心の強さたるや。やはり好奇心とそれに伴う情熱が、完全にとは言えないまでも数多のことにおいて、目の前にある壁を乗り越えようとする原動力になりえるのだろう。
Maison Ella/藤川江良/フランスかぶれ。フランスやパリについての物事を勝手に研究中。本屋活動の際のモットーは「本棚から世界へ」。
日本語とドイツ語、二つの言語を用いて長年創作活動を行っている多和田葉子さんが、日本語からもドイツ語からも離れた地域で接する見聞の数々は、世界は、ことに文学の世界は多様さに満ちているけれど、単純に国境で括るものではないことを我々に伝えてくれる。それにしても多和田さんの諸言語への好奇心の強さたるや。やはり好奇心とそれに伴う情熱が、完全にとは言えないまでも数多のことにおいて、目の前にある壁を乗り越えようとする原動力になりえるのだろう。
Maison Ella/藤川江良/フランスかぶれ。フランスやパリについての物事を勝手に研究中。本屋活動の際のモットーは「本棚から世界へ」。

あのとき始まったことのすべて
中村航 KADOKAWA
中学校の同級生に10年ぶりに会うことから始まる。今はいつから始まったのだろう? そんな事を改めて考えてしまう。朧気な自分の記憶が交錯する。中学校の頃なんて、大して良い記憶もない。でも、あの時に何かが始まったのかもしれない。今だって何かが始まっている気がする。いつだって、何かが始まる。大丈夫だと思えた本です。
Kamebooks/kamebooks/亀と本と酒を愛するインディーズ本屋。一箱古本市や路上で、のんびりと本を売っています。
中学校の同級生に10年ぶりに会うことから始まる。今はいつから始まったのだろう? そんな事を改めて考えてしまう。朧気な自分の記憶が交錯する。中学校の頃なんて、大して良い記憶もない。でも、あの時に何かが始まったのかもしれない。今だって何かが始まっている気がする。いつだって、何かが始まる。大丈夫だと思えた本です。
Kamebooks/kamebooks/亀と本と酒を愛するインディーズ本屋。一箱古本市や路上で、のんびりと本を売っています。

壺屋焼入門
倉成多郎 ボーダーインク
牧志から少し歩いたところにある壺屋地区。近世から今に至るまで、那覇における焼物(やちむん)の中心地である。本書は壺屋焼を、通史を軸に紹介していく入門書である。琉球王国~沖縄県の歴史の中での壺屋焼の変遷は実に面白く、民藝運動や戦後復興にも深く関わっている。「南蛮」という名称で展開された焼物や、エキゾチックな古典焼は、さながら山之口貘の『会話』における一節を思い出す。また、本書の最後には、壺屋地区の紹介が記載されており、沖縄旅行の際には簡単なガイドとしても使用することができる。本書を持ちながら、壺屋の焼物通りをぶらりと歩くのはいかがだろうか。
Out of the Page/松永弾正/ほぼ本屋本専門の間借り本屋です。国内外の本屋も巡っています。鷺沢文香さんを応援しています。
牧志から少し歩いたところにある壺屋地区。近世から今に至るまで、那覇における焼物(やちむん)の中心地である。本書は壺屋焼を、通史を軸に紹介していく入門書である。琉球王国~沖縄県の歴史の中での壺屋焼の変遷は実に面白く、民藝運動や戦後復興にも深く関わっている。「南蛮」という名称で展開された焼物や、エキゾチックな古典焼は、さながら山之口貘の『会話』における一節を思い出す。また、本書の最後には、壺屋地区の紹介が記載されており、沖縄旅行の際には簡単なガイドとしても使用することができる。本書を持ちながら、壺屋の焼物通りをぶらりと歩くのはいかがだろうか。
Out of the Page/松永弾正/ほぼ本屋本専門の間借り本屋です。国内外の本屋も巡っています。鷺沢文香さんを応援しています。

日輪の翼
中上健次 河出書房新社
〝路地〟を抜け出すも、行き着く先は官能が渦を巻く〝聖なる路地〟であった……。七人の老婆と四人の若者は冷凍トレーラーで熊野を発つ。トレーラーは時に地を這い、時に宙を駆ける。疾駆する姿は不死鳥の如く、太陽へ向け何度ももがき羽撃き続ける。迸る欲望、熱気、暴力。それらが渾然一体となった時、〝官能〟と言い換えられる。官能にまみれた彼らが日本中をさまよう姿は、生きることに食らいつき激情を滾らせ続ける人間としての姿を、色濃く体現しているようだ。彼らが行き着く先は何処か。〝路地〟の先に見つけ出すものは何か。そしてその問題は、現代を生きる我々にも強く迫りくる。この時代の〝いまここ〟を抜け出すための必読書である。
書肆 海と夕焼/柳沼雄太/古本を扱う間借り本屋。硬派な日本文学(三島由紀夫/中上健次等)を愛好。今年から本屋活動修行中。
〝路地〟を抜け出すも、行き着く先は官能が渦を巻く〝聖なる路地〟であった……。七人の老婆と四人の若者は冷凍トレーラーで熊野を発つ。トレーラーは時に地を這い、時に宙を駆ける。疾駆する姿は不死鳥の如く、太陽へ向け何度ももがき羽撃き続ける。迸る欲望、熱気、暴力。それらが渾然一体となった時、〝官能〟と言い換えられる。官能にまみれた彼らが日本中をさまよう姿は、生きることに食らいつき激情を滾らせ続ける人間としての姿を、色濃く体現しているようだ。彼らが行き着く先は何処か。〝路地〟の先に見つけ出すものは何か。そしてその問題は、現代を生きる我々にも強く迫りくる。この時代の〝いまここ〟を抜け出すための必読書である。
書肆 海と夕焼/柳沼雄太/古本を扱う間借り本屋。硬派な日本文学(三島由紀夫/中上健次等)を愛好。今年から本屋活動修行中。

ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集
斉藤倫 福音館
「この本はライオン堂さんっぽいから絶対にある」と来店された方がいたのですが、ぼくはその時知りました。こう思ってもらえるのって不思議な感覚で、嬉しさ七割、期待に応えていない申し訳なさ二割、あと一割は言葉にできません。慌てて読んだら「これは当店にあるべき本だ!」と、会う人会う人におすすめ。装丁の素敵さや文章の優しさからか普段本を読まない人も読んでくれて。感想を言いに来てくれる人もいて嬉しかったです。内容は、おじさんと小学生が詩を中心に会話を重ねながら言葉について考えるんですけど、んー、紹介する詩のチョイスや登場人物の語り口、細部がいいんです。子供向けなのかもしれないけど、大人に読んで欲しい本です。
双子のライオン堂/竹田信弥/東京赤坂にある小さな本屋です。作家や研究者による選書の専門店です。
「この本はライオン堂さんっぽいから絶対にある」と来店された方がいたのですが、ぼくはその時知りました。こう思ってもらえるのって不思議な感覚で、嬉しさ七割、期待に応えていない申し訳なさ二割、あと一割は言葉にできません。慌てて読んだら「これは当店にあるべき本だ!」と、会う人会う人におすすめ。装丁の素敵さや文章の優しさからか普段本を読まない人も読んでくれて。感想を言いに来てくれる人もいて嬉しかったです。内容は、おじさんと小学生が詩を中心に会話を重ねながら言葉について考えるんですけど、んー、紹介する詩のチョイスや登場人物の語り口、細部がいいんです。子供向けなのかもしれないけど、大人に読んで欲しい本です。
双子のライオン堂/竹田信弥/東京赤坂にある小さな本屋です。作家や研究者による選書の専門店です。

シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々
ジェレミー・マーサー 著
市川恵里 訳 河出書房新社
ただの書店に留まらず【書店を装った社会主義的ユートピア】として、著者も含めたどこかに傷を持った多国籍な日陰者たちを何万人も受け入れている姿に、同じく本を取り扱うお店として刺激を受けました。
ローカルメディア&シェア本屋はっち/川口景子/大阪のフリーペーパー専門店&シェア本屋です。本好きが集まる隠れ家として頑張っています。
ただの書店に留まらず【書店を装った社会主義的ユートピア】として、著者も含めたどこかに傷を持った多国籍な日陰者たちを何万人も受け入れている姿に、同じく本を取り扱うお店として刺激を受けました。
ローカルメディア&シェア本屋はっち/川口景子/大阪のフリーペーパー専門店&シェア本屋です。本好きが集まる隠れ家として頑張っています。

聖なるズー
濱野ちひろ 集英社
ドイツの動物性愛者団体『ZETA(ゼータ)』のメンバーと生活をともにして、彼らの動物性愛者としての実態を調査したノンフィクション。開高健ノンフィクション賞受賞作。動物とセックスをするという行為は、変態趣味、動物虐待の印象がつきまとうし、あまり気持ちの良いものではない。だが、本書を読むと動物性愛者は倒錯した性癖の持ち主ではないとわかる。本書を読んだから動物性愛行為を容認できるわけではないが、これもひとつの愛の形だと思うことはできる。
タカラ~ムの本棚/佐野隆広(タカラ~ム)/下北沢「Bookshop Traveller」の間借り本屋です。2回めの参加です。
ドイツの動物性愛者団体『ZETA(ゼータ)』のメンバーと生活をともにして、彼らの動物性愛者としての実態を調査したノンフィクション。開高健ノンフィクション賞受賞作。動物とセックスをするという行為は、変態趣味、動物虐待の印象がつきまとうし、あまり気持ちの良いものではない。だが、本書を読むと動物性愛者は倒錯した性癖の持ち主ではないとわかる。本書を読んだから動物性愛行為を容認できるわけではないが、これもひとつの愛の形だと思うことはできる。
タカラ~ムの本棚/佐野隆広(タカラ~ム)/下北沢「Bookshop Traveller」の間借り本屋です。2回めの参加です。

モンテレッジオ 小さな村の旅する本屋の物語
内田洋子、方丈社
2016年、空き家活用に関わることになり想いついたのが、大好きな本や絵本の置いてある「場づくり」でした。同時期に一箱古本市に出会い「旅するブックカフェ」としての出店を通して、いろいろな本屋さんや本屋さんを始めようとしている方々に出会いました。2019年、ふと目にした「モンテレッジオ 小さな村の旅する本屋の物語」を読んで、「本」によってもたらされるものは、人々の好奇心を満たし、生活を豊かにし、人生の指針であったり、技術や生活の糧になる情報であったり、知らない世界やその多様性を教えてくれるものだと改めて痛感しました。「本の行商人」を追うことで「本を運ぶ」「届ける人」のルーツを、見事に描き出している本書に、私自身の道しるべを見つけた想いがしています。
旅するブックカフェ/Little Ring/一箱古本市出店とマイクロライブラリーを開いています♪ カバンに本を詰めて旅に出るのが夢です♪
2016年、空き家活用に関わることになり想いついたのが、大好きな本や絵本の置いてある「場づくり」でした。同時期に一箱古本市に出会い「旅するブックカフェ」としての出店を通して、いろいろな本屋さんや本屋さんを始めようとしている方々に出会いました。2019年、ふと目にした「モンテレッジオ 小さな村の旅する本屋の物語」を読んで、「本」によってもたらされるものは、人々の好奇心を満たし、生活を豊かにし、人生の指針であったり、技術や生活の糧になる情報であったり、知らない世界やその多様性を教えてくれるものだと改めて痛感しました。「本の行商人」を追うことで「本を運ぶ」「届ける人」のルーツを、見事に描き出している本書に、私自身の道しるべを見つけた想いがしています。
旅するブックカフェ/Little Ring/一箱古本市出店とマイクロライブラリーを開いています♪ カバンに本を詰めて旅に出るのが夢です♪

くろは おうさま
メネナ・コティン(文)、ロサナ・ファリア (絵)、宇野和美(訳)、サウザンブックス社
真っ黒の紙に銀の文字、透明ニスの盛り上がりで絵と点字が印刷されている無彩色の絵本。その美しさにまず、目を奪われます。これは夜? 闇の世界? これは、生まれつき目の見えないトマスくんの感じる色の世界。例えば黄色はからし。ぴりりとからいけど、ひよこの羽みたいにふわふわ。視覚以外の感覚で捉える言葉に誘われ、脳裏に浮かび上がる色のなんと豊かなこと。目を瞑ると様々な色や匂いや味や音が記憶とともに蘇ります。そして、くろはおうさま。この絵本はトマス君の一番好きな色で満たされていたのですね。日本語版出版にあたってJIS規格対応の点字シートを添付し、目の見える人も見えない人も色の世界を共有できる絵本になっています。
絵本のこたち/熊谷聡子/京都伏見の絵本屋です。京阪中書島からバスでひとつめの停留所。言うほど遠くないんです。
真っ黒の紙に銀の文字、透明ニスの盛り上がりで絵と点字が印刷されている無彩色の絵本。その美しさにまず、目を奪われます。これは夜? 闇の世界? これは、生まれつき目の見えないトマスくんの感じる色の世界。例えば黄色はからし。ぴりりとからいけど、ひよこの羽みたいにふわふわ。視覚以外の感覚で捉える言葉に誘われ、脳裏に浮かび上がる色のなんと豊かなこと。目を瞑ると様々な色や匂いや味や音が記憶とともに蘇ります。そして、くろはおうさま。この絵本はトマス君の一番好きな色で満たされていたのですね。日本語版出版にあたってJIS規格対応の点字シートを添付し、目の見える人も見えない人も色の世界を共有できる絵本になっています。
絵本のこたち/熊谷聡子/京都伏見の絵本屋です。京阪中書島からバスでひとつめの停留所。言うほど遠くないんです。

私と鰐と妹の部屋
大前粟生 書肆侃侃房
「妹の右目からビームが出て止まらない。」「こっくりさんと暮らして七十年になる。」一行目から引きが強い。とても奇妙なはじまりだ。けれど、大前粟生の筆はただそのまま奇想を広げていくだけではなく、今の社会が抱える切実さを同時に掬い上げてくれる。長くても4ページ、短ければ1ページで収まる53の物語は、全体でひとつのかたまりにも思えて、不思議な魅力がつまっている。文芸の世界に現れた新星による、とてもハチャメチャで、とても優しい掌編集。まずは一編、ご賞味あれ。
toi books/磯上竜也/大阪・本町の本屋。今年も色々やっていきます。
「妹の右目からビームが出て止まらない。」「こっくりさんと暮らして七十年になる。」一行目から引きが強い。とても奇妙なはじまりだ。けれど、大前粟生の筆はただそのまま奇想を広げていくだけではなく、今の社会が抱える切実さを同時に掬い上げてくれる。長くても4ページ、短ければ1ページで収まる53の物語は、全体でひとつのかたまりにも思えて、不思議な魅力がつまっている。文芸の世界に現れた新星による、とてもハチャメチャで、とても優しい掌編集。まずは一編、ご賞味あれ。
toi books/磯上竜也/大阪・本町の本屋。今年も色々やっていきます。

月とコーヒー
吉田篤弘 徳間書店
就寝前に読むために書かれた24のショートストーリー。どこか幻想的で童話的な世界観のなかで、ここから物語が広がっていくのだろうという場面で唐突に終わる話ばかり。いったいこの物語はこれからどうなっていくのかと、その後の物語を想像しつつ眠りに落ちるところまでが、この本の読書です。ページを閉じ、目を閉じてから続く物語たちをぜひお楽しみください。
とほん/砂川昌広/奈良の大和郡山にある小さな本屋です。のほほんとした本屋を目指しています。
就寝前に読むために書かれた24のショートストーリー。どこか幻想的で童話的な世界観のなかで、ここから物語が広がっていくのだろうという場面で唐突に終わる話ばかり。いったいこの物語はこれからどうなっていくのかと、その後の物語を想像しつつ眠りに落ちるところまでが、この本の読書です。ページを閉じ、目を閉じてから続く物語たちをぜひお楽しみください。
とほん/砂川昌広/奈良の大和郡山にある小さな本屋です。のほほんとした本屋を目指しています。

ザ・ディスプレイスト 難民作家18人の自分と家族の物語
ヴィエト・タン・ウェン 編 山田文 訳 ポプラ社
本書は世界中のあらゆる地域からアメリカなどに逃れた当事者である難民作家の物語が収録されたアンソロジーです。編者であるヴィエト・タン・ウェンは「声なき者と呼ばれる人たちは、ほんとうは声をもっていないわけではないということだ。声なき者の多くは、実は絶えず語っている。聞こえるところまで近づけば、聞く力があれば、聞こえないものの存在に気づいていれば、声は決して小さくない。問題は世界の大部分がその声を聞きたいと思っていないことにある。あるいは世界に声が聞こえていないことにある」と語ります。今、世界のどこかで困難に陥っている人たちが確かに存在しているという現実に想いを巡らせる一冊になればよいと思います。
小声書房/橋爪文哉/声の小さな店主がこっそりオススメ本を紹介しています。いつか実店舗を持ちたいな。
本書は世界中のあらゆる地域からアメリカなどに逃れた当事者である難民作家の物語が収録されたアンソロジーです。編者であるヴィエト・タン・ウェンは「声なき者と呼ばれる人たちは、ほんとうは声をもっていないわけではないということだ。声なき者の多くは、実は絶えず語っている。聞こえるところまで近づけば、聞く力があれば、聞こえないものの存在に気づいていれば、声は決して小さくない。問題は世界の大部分がその声を聞きたいと思っていないことにある。あるいは世界に声が聞こえていないことにある」と語ります。今、世界のどこかで困難に陥っている人たちが確かに存在しているという現実に想いを巡らせる一冊になればよいと思います。
小声書房/橋爪文哉/声の小さな店主がこっそりオススメ本を紹介しています。いつか実店舗を持ちたいな。

考えるとはどういうことか
梶谷真司 幻冬舎
女性も男性も関係なく、0歳のこどもから100歳の大人まで参加できる「哲学対話」についての本です。上手いコト喋るかどうかよりも、正しいか正しくないかよりも、もっと本当は言いたかったこと、問いたかったことを言える喜びや驚き、他者と共に自由になる楽しさが、そこにあります。
さや書店/sakuya/たま~に一箱古本市に出没。猫とお茶と広い空間でぼ~っとするのが好きな本屋です。
女性も男性も関係なく、0歳のこどもから100歳の大人まで参加できる「哲学対話」についての本です。上手いコト喋るかどうかよりも、正しいか正しくないかよりも、もっと本当は言いたかったこと、問いたかったことを言える喜びや驚き、他者と共に自由になる楽しさが、そこにあります。
さや書店/sakuya/たま~に一箱古本市に出没。猫とお茶と広い空間でぼ~っとするのが好きな本屋です。

古くてあたらしい仕事
島田潤一郎 新潮社
自分が社会に対して必要とされているのか、生きていくとは何か、自分にできることは何か。この本で語られているのは、仲の良かった従兄の死をきっかけにして、1人出版社夏葉社を立ち上げた著者の、仕事に対する想いと生き方論だ。真っ直ぐに、芯を持って、ただひたすらに、正直に生きること。とてもシンプルで、でも続けていくのはとても難しいこと。僕が惹き込まれるのは、著者の淡々とした語り口の中で、時折見せる心根の強さとふとした弱さが同居しているところだ。ここでいう強さは純粋さであり、弱さは優しさでもある。「嘘をつかない。裏切らない。自分だけが得をしようとは考えない」この言葉を胸に今日も1日を過ごしていきたい。
HACHIJU-ICHI/松尾光泰/福岡市にて夫婦で雑貨と書籍のお店をしています。

反解釈
スーザン・ソンタグ 筑摩書房
「内容や主題よりも様式や形式のほうが重要である。」この言葉には溜飲を下げられた。人は作品(映画、音楽、絵画、舞踊etc)と対峙したときに「解釈」するから逃れられない。つまり内容ばかりに拘泥してしまう。内容を抽出し、「解釈」する事で安心感を得ようとするのはブルジョワ的俗物根性にほかならない。本書の「《キャンプ》についてのノート」はまさに説明しがたい感覚を見事に言語化している。科学的文化と違い、芸術的文化は発展や変化はしても科学技術と同じ尺度では進歩しない。作品が「そのままそこにあること」を受信するのが新しい感受性なのだと気づかされる。作品への向き合い方を180度変えさせられた指針となる1冊。
SATELLITE CITY BOOKS/小野祐介/お店はありません。いつかお店を開店したいです。
「内容や主題よりも様式や形式のほうが重要である。」この言葉には溜飲を下げられた。人は作品(映画、音楽、絵画、舞踊etc)と対峙したときに「解釈」するから逃れられない。つまり内容ばかりに拘泥してしまう。内容を抽出し、「解釈」する事で安心感を得ようとするのはブルジョワ的俗物根性にほかならない。本書の「《キャンプ》についてのノート」はまさに説明しがたい感覚を見事に言語化している。科学的文化と違い、芸術的文化は発展や変化はしても科学技術と同じ尺度では進歩しない。作品が「そのままそこにあること」を受信するのが新しい感受性なのだと気づかされる。作品への向き合い方を180度変えさせられた指針となる1冊。
SATELLITE CITY BOOKS/小野祐介/お店はありません。いつかお店を開店したいです。

たとえ、ずっと、平行だとしても
庄野雄治 Deterio Liber
「今、小説を書いていて、10編溜まったら本を出そうと思うんだ」と庄野さんから聞いたのは一昨年の夏頃だった。コーヒーロースターの庄野さんが短編小説集を出す―。日々の焙煎の傍で書き上げた小説は、ひとつひとつを読むと単一品種のシングルオリジンだが、本としてまとまると、さながら優れたジャズプレイヤー達が合わさって奏でるブレンドコーヒーのような一冊に仕上がっていた。今時のクリーンな感じのスペシャルティではなくて野趣溢れるごった煮のような深煎りコーヒー。レイモンド・カーヴァーや、深沢七郎をオマージュしたような文体も垣間見えるヴァラエティに富んだ物語は、きら星の如く輝いている。それは正に庄野雄治さんその人なのだ。
本の轍-Book On The Tracks-/越智政尚/本と雑貨をハシゴして、コーヒーも飲める〝文学のまち松山〟の本屋です。轍は続くよどこまでもー。
「今、小説を書いていて、10編溜まったら本を出そうと思うんだ」と庄野さんから聞いたのは一昨年の夏頃だった。コーヒーロースターの庄野さんが短編小説集を出す―。日々の焙煎の傍で書き上げた小説は、ひとつひとつを読むと単一品種のシングルオリジンだが、本としてまとまると、さながら優れたジャズプレイヤー達が合わさって奏でるブレンドコーヒーのような一冊に仕上がっていた。今時のクリーンな感じのスペシャルティではなくて野趣溢れるごった煮のような深煎りコーヒー。レイモンド・カーヴァーや、深沢七郎をオマージュしたような文体も垣間見えるヴァラエティに富んだ物語は、きら星の如く輝いている。それは正に庄野雄治さんその人なのだ。
本の轍-Book On The Tracks-/越智政尚/本と雑貨をハシゴして、コーヒーも飲める〝文学のまち松山〟の本屋です。轍は続くよどこまでもー。

海色の壜
田丸雅智 双葉社
田丸雅智さんのショートショート集。海の香りが漂い、夕日や星空が美しい。突拍子もないのに実際にあり得そうな話が20篇。正直、ショートショートにここまで心を掴まれるとは思っていなかった。『似豆』には心臓をグサッとやられてしまい、後から何だか慰められた気がした。『部屋釣り』を読んだ後にはもしかして、と期待を込めて天井を眺めたくなる。ほかにもムフフと笑いたくなる話や、懐かしさを覚える話など、色とりどりの話が詰まっている。それぞれ、誰かに読まれるのを静かに待っており、読む人によって違った色に見えるのだろう。だからこそ本を読むっていいな、と再認識させられた本でもある。
明屋書店MEGA平田店/安井愛弓美/「ここに来たら何かある」そんなご期待に応えるべく、日々奮闘中。来てよかったと思える店舗を目指します。
田丸雅智さんのショートショート集。海の香りが漂い、夕日や星空が美しい。突拍子もないのに実際にあり得そうな話が20篇。正直、ショートショートにここまで心を掴まれるとは思っていなかった。『似豆』には心臓をグサッとやられてしまい、後から何だか慰められた気がした。『部屋釣り』を読んだ後にはもしかして、と期待を込めて天井を眺めたくなる。ほかにもムフフと笑いたくなる話や、懐かしさを覚える話など、色とりどりの話が詰まっている。それぞれ、誰かに読まれるのを静かに待っており、読む人によって違った色に見えるのだろう。だからこそ本を読むっていいな、と再認識させられた本でもある。
明屋書店MEGA平田店/安井愛弓美/「ここに来たら何かある」そんなご期待に応えるべく、日々奮闘中。来てよかったと思える店舗を目指します。

えーえんとくちから
笹井宏之 筑摩書房
短歌・詩歌の本にしては珍しく、当店では静かに淡々と売れていっている印象があります。26歳で夭折した笹井宏之さんの短歌のみならず、未発表原稿なども収録されています。エッセイ、俳句、詩などからは笹井さんその人が垣間見えるようです。ただ、それらを含めて全ての作品が日常のようでいて、どこでもないような雰囲気を併せ持っているように感じます。言葉はこんなにも自由で豊穣なのかと何度読んでも新しい感動と発見がある一冊です。
NENOi/根井啓/東京の早稲田で本(新刊、古本、zine)と雑貨を取り扱う小さなお店です。ビールもコーヒーも飲めます。
短歌・詩歌の本にしては珍しく、当店では静かに淡々と売れていっている印象があります。26歳で夭折した笹井宏之さんの短歌のみならず、未発表原稿なども収録されています。エッセイ、俳句、詩などからは笹井さんその人が垣間見えるようです。ただ、それらを含めて全ての作品が日常のようでいて、どこでもないような雰囲気を併せ持っているように感じます。言葉はこんなにも自由で豊穣なのかと何度読んでも新しい感動と発見がある一冊です。
NENOi/根井啓/東京の早稲田で本(新刊、古本、zine)と雑貨を取り扱う小さなお店です。ビールもコーヒーも飲めます。

ハイツひなげし
古川誠 センジュ出版
小岩の古い木造アパートに、三歳まで住んでいた。トタンの急な階段。目の前の小さな公園。通っていた銭湯。それが私の原風景である。『ハイツひなげし』は、家賃五万円のアパートに暮らす住人たちの物語だ。彼らは悩みや苦しみを抱えながら、それぞれの日常を生きている。小田島さん、という住人がいる。小田島さんは、彼らに声をかける。彼らは皆、小田島さんの作る肉じゃがや、好きな音楽や、公園でビール片手に交わす会話に、気が付けば救われている。古いアパートの前を通るとき、そこにある一つ一つの生活を想像する。両親が幼い私を育てていた時間を想像する。そこに小田島さんがいたら、なんと声をかけてくれただろうかと、想像する。
栞文庫/aya/都内の一箱古本市にたまに出店しています。「本好きあるある栞」の製作、販売も行っています。
小岩の古い木造アパートに、三歳まで住んでいた。トタンの急な階段。目の前の小さな公園。通っていた銭湯。それが私の原風景である。『ハイツひなげし』は、家賃五万円のアパートに暮らす住人たちの物語だ。彼らは悩みや苦しみを抱えながら、それぞれの日常を生きている。小田島さん、という住人がいる。小田島さんは、彼らに声をかける。彼らは皆、小田島さんの作る肉じゃがや、好きな音楽や、公園でビール片手に交わす会話に、気が付けば救われている。古いアパートの前を通るとき、そこにある一つ一つの生活を想像する。両親が幼い私を育てていた時間を想像する。そこに小田島さんがいたら、なんと声をかけてくれただろうかと、想像する。
栞文庫/aya/都内の一箱古本市にたまに出店しています。「本好きあるある栞」の製作、販売も行っています。

ブラバン
津原泰水 新潮社
広島市内の小さなbarで生業をたてる主人公のもとにある日、高校時代同じ吹奏楽部で時を過ごした仲間が訪れる。「自分の結婚式のために当時のメンバーを集めて演奏してほしい」と。1980年広島の県立高校吹奏楽部の生徒たちの人生。1980年代初めの音楽と空気。40代になった主人公が25年前を回想しつつ、自分自身を見つめ直すことになる。40才は一度立ち止まって振り返るタイミングなのだろうか。ここまで来たけれどまだやれる。何度でもやり直せるよ。登場人物それぞれがいとおしく、その後の人生にもエールを送りたくなる小説です。
うららや/うらら/2014年より一箱古本市に出店しています。
広島市内の小さなbarで生業をたてる主人公のもとにある日、高校時代同じ吹奏楽部で時を過ごした仲間が訪れる。「自分の結婚式のために当時のメンバーを集めて演奏してほしい」と。1980年広島の県立高校吹奏楽部の生徒たちの人生。1980年代初めの音楽と空気。40代になった主人公が25年前を回想しつつ、自分自身を見つめ直すことになる。40才は一度立ち止まって振り返るタイミングなのだろうか。ここまで来たけれどまだやれる。何度でもやり直せるよ。登場人物それぞれがいとおしく、その後の人生にもエールを送りたくなる小説です。
うららや/うらら/2014年より一箱古本市に出店しています。

毒薬の手帖
デボラ・ブラム 青土社
個人的に買った海外ノンフィクションに猫が出てきたら心の中でガッツポーズ。2019年に読んだのは『人喰い』『世にも危険な医療の世界史』『爆発する歯、鼻から尿』『黄金州の殺人鬼』といった、およそ猫本専門店の店主とは思えないラインナップですが、まどろっこしい構成や翻訳文の作品が多いなか、この『毒薬の手帖』は1920年代の米国の社会情勢も踏まえ、法医毒物学と科学捜査の礎がどのように築かれていったかを緻密かつドラマティックに描いた傑作。もちろん猫も出てきます。
Cat’s Meow Books/安村正也/猫のいる/猫本だらけの/猫と人を幸せにする本屋です。売上の10%を猫の保護活動に寄付しています。
個人的に買った海外ノンフィクションに猫が出てきたら心の中でガッツポーズ。2019年に読んだのは『人喰い』『世にも危険な医療の世界史』『爆発する歯、鼻から尿』『黄金州の殺人鬼』といった、およそ猫本専門店の店主とは思えないラインナップですが、まどろっこしい構成や翻訳文の作品が多いなか、この『毒薬の手帖』は1920年代の米国の社会情勢も踏まえ、法医毒物学と科学捜査の礎がどのように築かれていったかを緻密かつドラマティックに描いた傑作。もちろん猫も出てきます。
Cat’s Meow Books/安村正也/猫のいる/猫本だらけの/猫と人を幸せにする本屋です。売上の10%を猫の保護活動に寄付しています。

ひまのつめあわせ
入江英樹・フクダカヨ 遊と暇
東京の端っこに暮らす、「ひま上手」な家族の日常が詰まった本。ただただ暖かい幸せのカタチが見える1冊です。
移動式本屋 るーこぼん/店主 るーこ/ワーゲンバス仕様の移動式本屋です。福岡を走り回っています。
東京の端っこに暮らす、「ひま上手」な家族の日常が詰まった本。ただただ暖かい幸せのカタチが見える1冊です。
移動式本屋 るーこぼん/店主 るーこ/ワーゲンバス仕様の移動式本屋です。福岡を走り回っています。

プルーストとイカ
メアリアン・ウルフ 著、小松淳子 訳 インターシフト
2019年、初めての子どもを授かりました。面白いもので、親になった途端に、自分が母からあたえてもらった恩恵? 贈り物? やさしさ? に思い至れるようになりました。毎晩、寝る前に本を読んでもらった記憶……。おかげでいま、この場所に立てています。母だけでなく、人類の歴史が、こうして文章を書き、読む、自分の行為を支えてくれていた。その連続性を思うと、自分の命もまんざらではない、そんな気がしてきます。わが娘もできるだけ「膝の上」で育て、次の世代に繋げていきたい、という決意表明も込めて、2019年の一冊に。
らくだ舎/千葉智史/紀伊半島のはしっこ、山の中にある喫茶室兼本屋です。2020年は、耕す年に。
2019年、初めての子どもを授かりました。面白いもので、親になった途端に、自分が母からあたえてもらった恩恵? 贈り物? やさしさ? に思い至れるようになりました。毎晩、寝る前に本を読んでもらった記憶……。おかげでいま、この場所に立てています。母だけでなく、人類の歴史が、こうして文章を書き、読む、自分の行為を支えてくれていた。その連続性を思うと、自分の命もまんざらではない、そんな気がしてきます。わが娘もできるだけ「膝の上」で育て、次の世代に繋げていきたい、という決意表明も込めて、2019年の一冊に。
らくだ舎/千葉智史/紀伊半島のはしっこ、山の中にある喫茶室兼本屋です。2020年は、耕す年に。

急に具合が悪くなる
宮野真生子・磯野真穂 晶文社
夢中で読んでいる。学者同士の強めのキャッチボールに、気持ちが動く。何かを引用して説明できること、説明がつかないこと。無理に説明しなくてもいいこと。思考を表す言葉の小難しさは多少あるけど、いちいちそれにつまづいて読むのを止めるのは絶対なしで、あまり深く考えすぎないようにして、わからないことはわからないまま今はとにかくぐんぐん読み進める。あとでもう一度読むから大丈夫。難しい本じゃない。私が2回読み終わったら貸してあげるし。
まがり書房/小笠原フネ/10代の若者がバンドを始めるが如く、おっさん店主が始めた本屋(新刊古書リトルプレス)です。
夢中で読んでいる。学者同士の強めのキャッチボールに、気持ちが動く。何かを引用して説明できること、説明がつかないこと。無理に説明しなくてもいいこと。思考を表す言葉の小難しさは多少あるけど、いちいちそれにつまづいて読むのを止めるのは絶対なしで、あまり深く考えすぎないようにして、わからないことはわからないまま今はとにかくぐんぐん読み進める。あとでもう一度読むから大丈夫。難しい本じゃない。私が2回読み終わったら貸してあげるし。
まがり書房/小笠原フネ/10代の若者がバンドを始めるが如く、おっさん店主が始めた本屋(新刊古書リトルプレス)です。

記憶する体
伊藤亜紗 春秋社
後天的に体の一部を失ってしまった人は、その部分の疼痛(幻肢痛)に悩まされるという事は聞いたことがあったけれど、どこか不思議エピソードなのかと思ってしまっていた。本書の、体験者への濃やかな取材、明晰な文章に触れ、その思い込みが消え去った。身体という、馴染みはあれど謎の多いもの。その捉え方、考え方が広がった。伊藤亜紗さんの文章は、そのテーマに不慣れな読者に対してもその入口を開いてくれる。本を読む事の凄さを改めて認識できたという意味でも、印象深い本です。
うさぎや株式会社/高田直樹/売れてる本、話題の本もいいけれど、それら以外にも目配りする本屋を目指しています。
後天的に体の一部を失ってしまった人は、その部分の疼痛(幻肢痛)に悩まされるという事は聞いたことがあったけれど、どこか不思議エピソードなのかと思ってしまっていた。本書の、体験者への濃やかな取材、明晰な文章に触れ、その思い込みが消え去った。身体という、馴染みはあれど謎の多いもの。その捉え方、考え方が広がった。伊藤亜紗さんの文章は、そのテーマに不慣れな読者に対してもその入口を開いてくれる。本を読む事の凄さを改めて認識できたという意味でも、印象深い本です。
うさぎや株式会社/高田直樹/売れてる本、話題の本もいいけれど、それら以外にも目配りする本屋を目指しています。

ジャガイモのきた道 ―文明・飢饉・戦争
山本紀夫、岩波書店
もしジャガイモが無かったら……。そんなことなど考えられない程、ジャガイモは、日常生活に空気のように当たり前に存在しています。もはや必要不可欠な存在となった「ジャガイモ」のたどって来た道のりを、詳細に深く綴っている本です。「シルクロード」ならぬ「ジャガイモロード」長年の研究と、数年に及ぶ現地に滞在しての調査と考察は、簡単ではないだけに、説得力があります。何より、「穀物こそが文明を築く」という歴史学者や農学者の通説に異を唱えて、「ジャガイモ」が文明を支えてきたという事実に限りなく近づいていて、爽快な気持ちにもなります。「ジャガイモ」に対する、尊敬と愛情、探求心の詰まった一冊。読み終えた後に、再び扉を開くと、「ゴロゴロ」とジャガイモが転がり落ちて来る光景が見られるはずです。
弥生坂 緑の本棚/綱島則光/植物も扱う古本カフェです。本と緑のある空間でゆっくりとした時間をどうぞ。
もしジャガイモが無かったら……。そんなことなど考えられない程、ジャガイモは、日常生活に空気のように当たり前に存在しています。もはや必要不可欠な存在となった「ジャガイモ」のたどって来た道のりを、詳細に深く綴っている本です。「シルクロード」ならぬ「ジャガイモロード」長年の研究と、数年に及ぶ現地に滞在しての調査と考察は、簡単ではないだけに、説得力があります。何より、「穀物こそが文明を築く」という歴史学者や農学者の通説に異を唱えて、「ジャガイモ」が文明を支えてきたという事実に限りなく近づいていて、爽快な気持ちにもなります。「ジャガイモ」に対する、尊敬と愛情、探求心の詰まった一冊。読み終えた後に、再び扉を開くと、「ゴロゴロ」とジャガイモが転がり落ちて来る光景が見られるはずです。
弥生坂 緑の本棚/綱島則光/植物も扱う古本カフェです。本と緑のある空間でゆっくりとした時間をどうぞ。

シカの白ちゃん
岡部伊都子 筑摩書房
生き物の命は、何て美しく、尊く、儚いんだろう。そんな気恥ずかしいくらいシンプルな感情を、まっすぐに引き起こしてくれた一冊。奈良公園に実在した鹿の一生を描いた、小学生低学年向けの作品。文字が大きく句読点が多くほとんどひらがなでやさしい語り口だなぁと、のほほんとページを繰ると、次々とたおやかで美しい表現に包まれ、白ちゃんのしなやかな体と美しい命を想う事になる。生きていく上での複雑な思い、率直な喜び、重苦しい怒り。清濁混じった情景が、易しいひらがなで紡ぎ出されていく。圧巻だ。差別、環境、動物問題と様々な視点を持てるが、何と言っても命と日本語の美しさを再認識させられる。子供だけが読むにはもったいない。
本と羊/副店主 森山美樹/東京都内での試験店舗、古本市出店、フォトブック展企画を経て、今年福岡での実店舗を計画して活動中です!
生き物の命は、何て美しく、尊く、儚いんだろう。そんな気恥ずかしいくらいシンプルな感情を、まっすぐに引き起こしてくれた一冊。奈良公園に実在した鹿の一生を描いた、小学生低学年向けの作品。文字が大きく句読点が多くほとんどひらがなでやさしい語り口だなぁと、のほほんとページを繰ると、次々とたおやかで美しい表現に包まれ、白ちゃんのしなやかな体と美しい命を想う事になる。生きていく上での複雑な思い、率直な喜び、重苦しい怒り。清濁混じった情景が、易しいひらがなで紡ぎ出されていく。圧巻だ。差別、環境、動物問題と様々な視点を持てるが、何と言っても命と日本語の美しさを再認識させられる。子供だけが読むにはもったいない。
本と羊/副店主 森山美樹/東京都内での試験店舗、古本市出店、フォトブック展企画を経て、今年福岡での実店舗を計画して活動中です!

尾崎放哉全句集
村上護 編 筑摩書房
こころが波立つような時に、ページを括る。たまたま開いたページにあった句を詠んで、一時の平静を取りもどす……そんな作用がある本。それは「尾崎放哉全句集」。尾崎放哉といえば種田山頭火と並んで有名な自由律俳句の人。特段に俳句が好きというわけではないけれど、尾崎放哉だけはなぜか大好き。その言葉に惹きつけられる。〝咳をしても一人〟は有名だけど、ほかにも響く句がたくさんある。たとえば〝大空のました帽子かぶらず〟や〝ただ風ばかり吹く日の雑念〟とか、〝こころをまとめる鉛筆とがらす〟など。なんだか見ている世界が重なって、気持ちが落ち着く。一番好きな句は〝人をそしる心をすて豆の皮むく〟。静かな心になれます。
古書まどそら堂/小林良壽/中央線・国分寺南口で営業中。何だかおもしろい、なんだかかわいいがコンセプトです。
こころが波立つような時に、ページを括る。たまたま開いたページにあった句を詠んで、一時の平静を取りもどす……そんな作用がある本。それは「尾崎放哉全句集」。尾崎放哉といえば種田山頭火と並んで有名な自由律俳句の人。特段に俳句が好きというわけではないけれど、尾崎放哉だけはなぜか大好き。その言葉に惹きつけられる。〝咳をしても一人〟は有名だけど、ほかにも響く句がたくさんある。たとえば〝大空のました帽子かぶらず〟や〝ただ風ばかり吹く日の雑念〟とか、〝こころをまとめる鉛筆とがらす〟など。なんだか見ている世界が重なって、気持ちが落ち着く。一番好きな句は〝人をそしる心をすて豆の皮むく〟。静かな心になれます。
古書まどそら堂/小林良壽/中央線・国分寺南口で営業中。何だかおもしろい、なんだかかわいいがコンセプトです。

かんがえる子ども
安野光雅、福音館書店
「すぐに役に立つ」や「〇〇ができるようになる」「わかりやすい」ことは本当に大切なの? 50年以上にわたって、数々の驚きにみちた絵本を描いてきた世界的画家である安野光雅が、「子ども」「学ぶこと」「自分で考えること」について爽やか且つ痛快に語るエッセイ。中でも、「本を読む」の章は、本屋の端くれとして、母親の一人として非常に興味深い。「本を読むことは、自分の考え方を育てること」。色々な考え方がある世の中で、子どもたちが(大人も)自分自身で物事を見極める力を持てるために本屋にできることがきっとある。親や先生はもちろん、子どもにかかわる全ての人にオススメしたい一冊。
めぐる×であう、えほん 絵本日和/おおさわじゅんこ/移動式絵本屋です。絵本の魅力を伝える場&人づくりを目的に、絵本のある暮らしをご提案しています。
「すぐに役に立つ」や「〇〇ができるようになる」「わかりやすい」ことは本当に大切なの? 50年以上にわたって、数々の驚きにみちた絵本を描いてきた世界的画家である安野光雅が、「子ども」「学ぶこと」「自分で考えること」について爽やか且つ痛快に語るエッセイ。中でも、「本を読む」の章は、本屋の端くれとして、母親の一人として非常に興味深い。「本を読むことは、自分の考え方を育てること」。色々な考え方がある世の中で、子どもたちが(大人も)自分自身で物事を見極める力を持てるために本屋にできることがきっとある。親や先生はもちろん、子どもにかかわる全ての人にオススメしたい一冊。
めぐる×であう、えほん 絵本日和/おおさわじゅんこ/移動式絵本屋です。絵本の魅力を伝える場&人づくりを目的に、絵本のある暮らしをご提案しています。

れもん、よむもん!
はるな檸檬、新潮社
おそらく自分と同世代の漫画家、はるな檸檬さんが、自らの読書遍歴を追った漫画エッセイです。この本に出てくる半分くらいしか読んでいない私なのですが、本から受けた衝撃だったり、本を通して仲良くなった女友達への憧れだったり、「この本の中に私もいる!」と思わず叫びたくなる本でした。これまでの人生で本から与えられたかけがえのないものを改めて思い出させてくれて、こみ上げるのを止められなくなって、「私も本が大好きなんだよ~~~~」って、ずびずび号泣しました。本好きにはもれなく差し出したいし、読みやすいので、普段本を読まない人にも勧めたい1冊です。
いか文庫/店主 粕川ゆき/お店も商品も無いけど、どこかで開店している「エア本屋」。リアル本屋や雑誌、ラジオやテレビなどにリアル出没します。
おそらく自分と同世代の漫画家、はるな檸檬さんが、自らの読書遍歴を追った漫画エッセイです。この本に出てくる半分くらいしか読んでいない私なのですが、本から受けた衝撃だったり、本を通して仲良くなった女友達への憧れだったり、「この本の中に私もいる!」と思わず叫びたくなる本でした。これまでの人生で本から与えられたかけがえのないものを改めて思い出させてくれて、こみ上げるのを止められなくなって、「私も本が大好きなんだよ~~~~」って、ずびずび号泣しました。本好きにはもれなく差し出したいし、読みやすいので、普段本を読まない人にも勧めたい1冊です。
いか文庫/店主 粕川ゆき/お店も商品も無いけど、どこかで開店している「エア本屋」。リアル本屋や雑誌、ラジオやテレビなどにリアル出没します。

ケンジントン公園のピーター・パン
バリー 著 南條竹則 訳 光文社
良く知られたディズニー映画と違い、キャラクター達はピーター・パンを除いて一切登場せず、また舞台も実在の公園、ケンジントン公園というミニマムさで、何とも物語の印象が違い過ぎて驚かされました。
KENKADOU511/田中冬一郎/大阪の読書会とカレー好きが集まるお店です。古典文学への補助線を引くのに注力しています。
良く知られたディズニー映画と違い、キャラクター達はピーター・パンを除いて一切登場せず、また舞台も実在の公園、ケンジントン公園というミニマムさで、何とも物語の印象が違い過ぎて驚かされました。
KENKADOU511/田中冬一郎/大阪の読書会とカレー好きが集まるお店です。古典文学への補助線を引くのに注力しています。

ここは、おしまいの地
こだま 太田出版
悲しいことが、哀しいことが書かれているのに、せつなくなるほどおもしろくておかしくて、涙が出てしまう、傑作エッセイ。こだまさん、やっぱり「入らない」だけじゃなかった。
とらきつね/前田瑞恵/福岡市、唐人町にある書店です。美味しいお菓子、宗像堂さんのパンも販売しています。
悲しいことが、哀しいことが書かれているのに、せつなくなるほどおもしろくておかしくて、涙が出てしまう、傑作エッセイ。こだまさん、やっぱり「入らない」だけじゃなかった。
とらきつね/前田瑞恵/福岡市、唐人町にある書店です。美味しいお菓子、宗像堂さんのパンも販売しています。

死にたい夜にかぎって 爪切男 扶桑社
爪切男、扶桑社
別れのシーンから始まりそこに至るまでを回想する中で、普通なら目をそらしたくなるような状況をじっと見つめて、希望のある話も死にたくなるようなことも ゴロゴロゴロっと転がるように面白い文章にしていてすごいです。どのお話にも別れの気配がこびりついていて、笑っているのにずっと切なくて泣き笑いしながら読み終えました。
FOLK old book store/吉村祥/大阪北浜で、新本・古本・服・食器などなど自由に販売しています。
別れのシーンから始まりそこに至るまでを回想する中で、普通なら目をそらしたくなるような状況をじっと見つめて、希望のある話も死にたくなるようなことも ゴロゴロゴロっと転がるように面白い文章にしていてすごいです。どのお話にも別れの気配がこびりついていて、笑っているのにずっと切なくて泣き笑いしながら読み終えました。
FOLK old book store/吉村祥/大阪北浜で、新本・古本・服・食器などなど自由に販売しています。

壁の向こうの住人たち
A・R・ホックシールド、訳)布施由紀子、岩波書店
「分断」を考える一冊として。米国でもリベラルが強い西海岸の社会学者が、南部の草の根保守への聞き取り・対話から新しい保守主義の考えや、内面を明らかにしていく。我々は軽んじられていると考える人間が増えた時社会はどうなるか。これは米国だけの問題ではない。類書の「ルポ トランプ王国」(金成隆一)とあわせて読みたい。
サルトリイバラ/サルトリイバラ店主/神奈川を中心に一箱古本市へ参加しています。大磯市の古本波止場がホーム化している最近です。
「分断」を考える一冊として。米国でもリベラルが強い西海岸の社会学者が、南部の草の根保守への聞き取り・対話から新しい保守主義の考えや、内面を明らかにしていく。我々は軽んじられていると考える人間が増えた時社会はどうなるか。これは米国だけの問題ではない。類書の「ルポ トランプ王国」(金成隆一)とあわせて読みたい。
サルトリイバラ/サルトリイバラ店主/神奈川を中心に一箱古本市へ参加しています。大磯市の古本波止場がホーム化している最近です。

ポーン・ロボット
森川成美、偕成社
青い髪の少女を目撃した日、帰ってみると、家が跡形もなく消えていた。うろたえる僕に隣の家の人が声をかけてくれた。僕は2か月間、失踪していたらしい―宇宙からの侵略、主人公は中学生。恋愛描写なしに男の子たちと女の子たちが知恵と勇気を持ち寄って敵に立ち向かう。久しぶりに出会ったジュブナイルSFに興奮した。これを読んだ時には眉村卓が他界することになるとは予想もしなかったが、「なぞの転校生」「ねらわれた学園」の核はしっかり引き継がれている、と思った。
乃帆書房/大友俊/秋田市で新刊と古書の両方を扱っています。3年目に突入しました。今年は文フリ岩手に参加します。
青い髪の少女を目撃した日、帰ってみると、家が跡形もなく消えていた。うろたえる僕に隣の家の人が声をかけてくれた。僕は2か月間、失踪していたらしい―宇宙からの侵略、主人公は中学生。恋愛描写なしに男の子たちと女の子たちが知恵と勇気を持ち寄って敵に立ち向かう。久しぶりに出会ったジュブナイルSFに興奮した。これを読んだ時には眉村卓が他界することになるとは予想もしなかったが、「なぞの転校生」「ねらわれた学園」の核はしっかり引き継がれている、と思った。
乃帆書房/大友俊/秋田市で新刊と古書の両方を扱っています。3年目に突入しました。今年は文フリ岩手に参加します。

ストーナー
ジョン・ウィリアムズ 作品社
特別なことなんてなにも起きない、ただひとりの男の生涯を、ただただ淡々と丁寧に描いたという、ただそれだけの物語が、なぜこんなにも心を打つのか。それは「特別ではないただの男の物語」だったからじゃないかと、そうおもいました。つまりそれは読んでいる我々、普通に日常を送り、たまたまこの本を手に取った我々こそが、「その男」に成りえるのではないか、と。またどんな仕事にも背景があるように、この本の成り立ちにも物語がありました。まさかこの物語を地で行くような背景が、この物語の翻訳を巡って起きていたとは。もうこの本の成り立ちも含め、すばらしいのひとことです。本物の物語というのは、こういうものではないだろうか。
靴箱文庫/足下研/本屋 靴箱文庫を京都 北野白梅町 But not for me内にて期間限定で開店中です。

抽斗のなかの海
朝吹真理子 中央公論新社
朝吹真理子さんの初エッセイ集。雲母への深い愛。2011年3月11日の将棋観戦記録。向き合った事象を五感すべてで感じとり、食べるようにして(それ食べるんかい! という実食の場面もあるのですが)身体に行きわたらせて自らのことばに変え、新たな窓を開いていく方なのだと思いました。こんな風にいつまでも、世界をまっすぐみつめる目をもっていたい。そうすれば、日々はいつも新鮮で、驚きと発見に満ちるはず。そして本当に好きなものと嫌なことを自分で理解していることが大事だということも。この本は、そばに置いてくり返し読むのだろうと感じています。それが自分を大事にすることだよなぁと、あらためて気付かせてくれた一冊です。
七月堂古書部/後藤聖子/七月堂という小さな出版社に併設の、古本と新本の小さな本屋です。
朝吹真理子さんの初エッセイ集。雲母への深い愛。2011年3月11日の将棋観戦記録。向き合った事象を五感すべてで感じとり、食べるようにして(それ食べるんかい! という実食の場面もあるのですが)身体に行きわたらせて自らのことばに変え、新たな窓を開いていく方なのだと思いました。こんな風にいつまでも、世界をまっすぐみつめる目をもっていたい。そうすれば、日々はいつも新鮮で、驚きと発見に満ちるはず。そして本当に好きなものと嫌なことを自分で理解していることが大事だということも。この本は、そばに置いてくり返し読むのだろうと感じています。それが自分を大事にすることだよなぁと、あらためて気付かせてくれた一冊です。
七月堂古書部/後藤聖子/七月堂という小さな出版社に併設の、古本と新本の小さな本屋です。

虹いろ図書館のへびおとこ
櫻井とりお 河出書房新社
いじめがきっかけで学校に行けなくなったほのかが行き場を失ったさきにたどり着いたのは町のおんぼろ図書館。そこで出会う「へびおとこ」こと司書のイヌガミさんをはじめとする素敵な人たちとの交流……たくさんの本……何も言わずに「居場所」を用意してくれているのがとても救いになりました。「図書館の自由に関する宣言」など胸が締めつけられる場面がいっぱいで……泣きました。私の中の「図書館」を改めて思い出させてくれた一冊になりました。
やまぼうし文庫/金沢かおる/新潟県十日町市で小さな本屋さん活動をしています。一箱古本市やイベント出店などで本を並べています。
いじめがきっかけで学校に行けなくなったほのかが行き場を失ったさきにたどり着いたのは町のおんぼろ図書館。そこで出会う「へびおとこ」こと司書のイヌガミさんをはじめとする素敵な人たちとの交流……たくさんの本……何も言わずに「居場所」を用意してくれているのがとても救いになりました。「図書館の自由に関する宣言」など胸が締めつけられる場面がいっぱいで……泣きました。私の中の「図書館」を改めて思い出させてくれた一冊になりました。
やまぼうし文庫/金沢かおる/新潟県十日町市で小さな本屋さん活動をしています。一箱古本市やイベント出店などで本を並べています。

少年が来る
ハン・ガン 著 井手俊作 訳 クオン
ここ数年読んだ本の中で1番印象に残った本。韓国民主化運動の象徴とされる光州事件をテーマにしている。光州事件で民主化運動を「よきもの」として行動した人たちが命を落とし、肉体が朽ちていく中、残った魂はどうなったのか、そして残されたものたちは、傷ついたからだとこころを抱えながらどう生きたのかが克明に記されていて、読んでいて胸に迫ってくる。
Maar/佐藤里愛/小田急線豪徳寺駅近く豪徳寺商店街の中にある小さな育児用品と本と文房具を売っているお店です。もう少し本を売りたいです。
ここ数年読んだ本の中で1番印象に残った本。韓国民主化運動の象徴とされる光州事件をテーマにしている。光州事件で民主化運動を「よきもの」として行動した人たちが命を落とし、肉体が朽ちていく中、残った魂はどうなったのか、そして残されたものたちは、傷ついたからだとこころを抱えながらどう生きたのかが克明に記されていて、読んでいて胸に迫ってくる。
Maar/佐藤里愛/小田急線豪徳寺駅近く豪徳寺商店街の中にある小さな育児用品と本と文房具を売っているお店です。もう少し本を売りたいです。

ランベルト男爵は二度生きる
(サン・ジュリオ島の奇想天外な物語)
ジャンニ・ロダーリ 著
原田和夫 訳 一藝社
「名前を唱えると若返る?」どういうこと? と気になってついついページを繰ってしまうお話です。ワクワクがとまりません。ランベルト男爵は大金持ちだけれど、年を取り病気だらけで思うように動けません。そんなある時いかがわしい噂を聞きつけます。「自分の名前を呼び続けてもらうと若返る」早速人を雇って「ランベルト、ランベルト……」名前を呼ばせ続けると本当に若返ってしまいました! でも物語の本当の楽しさはここからです。ランベルト男爵を亡き者にしてなんとか相続金を……と考える甥っ子や、男爵を誘拐して身代金をせしめようとするギャング団、色んな人間の思惑が駆け巡り、一体ランベルト男爵はどうなるのでしょう?
チェルビアット絵本店/四方実/奈良からイタリアの絵本を紹介している小鹿(チェルビアット)の絵本屋。日本とイタリアをつなぐ架け橋に。
「名前を唱えると若返る?」どういうこと? と気になってついついページを繰ってしまうお話です。ワクワクがとまりません。ランベルト男爵は大金持ちだけれど、年を取り病気だらけで思うように動けません。そんなある時いかがわしい噂を聞きつけます。「自分の名前を呼び続けてもらうと若返る」早速人を雇って「ランベルト、ランベルト……」名前を呼ばせ続けると本当に若返ってしまいました! でも物語の本当の楽しさはここからです。ランベルト男爵を亡き者にしてなんとか相続金を……と考える甥っ子や、男爵を誘拐して身代金をせしめようとするギャング団、色んな人間の思惑が駆け巡り、一体ランベルト男爵はどうなるのでしょう?
チェルビアット絵本店/四方実/奈良からイタリアの絵本を紹介している小鹿(チェルビアット)の絵本屋。日本とイタリアをつなぐ架け橋に。

たねは誰のもの
岩崎政利、有限会社ぺブル・スタジオ
命のみなもとの「たね」。この本は単なる種の本ではありません。長崎・雲仙で在来種・固定種の種を継いで野菜を作ってきた岩崎さん。その岩崎さんを通じて、食べることや暮らすこと、生きることそのものについて深く考えさせられ、発見に満ちた本でした。すべての方に読んでいただきたい本です。
SUS~くらしと本のみせ スウス~/木下知子/大阪・京橋の古本屋です。絵本・児童書・暮らしまわりの本・その他色々新刊本も少し扱っています。
命のみなもとの「たね」。この本は単なる種の本ではありません。長崎・雲仙で在来種・固定種の種を継いで野菜を作ってきた岩崎さん。その岩崎さんを通じて、食べることや暮らすこと、生きることそのものについて深く考えさせられ、発見に満ちた本でした。すべての方に読んでいただきたい本です。
SUS~くらしと本のみせ スウス~/木下知子/大阪・京橋の古本屋です。絵本・児童書・暮らしまわりの本・その他色々新刊本も少し扱っています。

3びきのこぐまさん
村山籌子 作 村山知義 絵 婦人之友社
表紙に描かれた3びきのこぐまさん。愛らしいポーズでこちらを見つめる姿に誘われるように本を開けば、村山知義さんと村山籌子さんの世界に一気に引き込まれます。お父さんにハンカチーフをもらったり、おぶうに入れさせようとするお母さんから隠れたり、おかしの絵をみて同じものをこしらえたり……彼らの何てことない一挙手一投足が可愛いのなんのって。それにしても……おぶう、いいですよね。
知遊堂亀貝店/山田宏孝/新潟市西区の書店です。
表紙に描かれた3びきのこぐまさん。愛らしいポーズでこちらを見つめる姿に誘われるように本を開けば、村山知義さんと村山籌子さんの世界に一気に引き込まれます。お父さんにハンカチーフをもらったり、おぶうに入れさせようとするお母さんから隠れたり、おかしの絵をみて同じものをこしらえたり……彼らの何てことない一挙手一投足が可愛いのなんのって。それにしても……おぶう、いいですよね。
知遊堂亀貝店/山田宏孝/新潟市西区の書店です。

母の愛、僕のラブ
柴田葵、書肆侃侃房
第1回笹井宏之賞の大賞受賞作。どこのページを開いても気になる歌が真っ直ぐに目に飛び込んできて、その度に身動きがとれなくなる感覚におそわれ、脈動が高まる。初めて笹井さんの歌集を読んだときに感じたものと似ており、「繰り返し読む本」の棚に加えた。
ゆふいん文学の森/前畑文隆/文豪太宰治が東京で暮らした下宿「碧雲荘」を湯布院に移築。名作の生まれた部屋に泊まれるブックカフェです。
第1回笹井宏之賞の大賞受賞作。どこのページを開いても気になる歌が真っ直ぐに目に飛び込んできて、その度に身動きがとれなくなる感覚におそわれ、脈動が高まる。初めて笹井さんの歌集を読んだときに感じたものと似ており、「繰り返し読む本」の棚に加えた。
ゆふいん文学の森/前畑文隆/文豪太宰治が東京で暮らした下宿「碧雲荘」を湯布院に移築。名作の生まれた部屋に泊まれるブックカフェです。

心の病気ってなんだろう?
松本卓也 平凡社
一見異常に見える心の病も、ごく正常な心の働きによって動いていることを、よく教えられた。統合失調症では妄想をつくることにより心を立て直そうとする。認知症では記憶や認識などの欠落で従来のじぶんの自信が失われていくなか、それでもじぶんはちゃんとした人間であると示そうとする、果敢な努力の結果が症状として表れる。本人がなんとか異常な状態から立ち直ろうとして生じる、病気からの「回復の試み」こそが、症状なのではないか。心の病から回復するとは、以前の状態とは違う形の生き方を手に入れること。病を通り抜けることにより、生が変化し、これまでとは違う形で社会との折合いをつける。その時尠ともこの狂った世界も変るはずだ。
古書かつら洞(ktr)/結崎剛/鎌倉と大船にある立飲み屋「ヒグラシ文庫」に併設の本屋。酒飲みながら本について語らい、読み、買えます。
一見異常に見える心の病も、ごく正常な心の働きによって動いていることを、よく教えられた。統合失調症では妄想をつくることにより心を立て直そうとする。認知症では記憶や認識などの欠落で従来のじぶんの自信が失われていくなか、それでもじぶんはちゃんとした人間であると示そうとする、果敢な努力の結果が症状として表れる。本人がなんとか異常な状態から立ち直ろうとして生じる、病気からの「回復の試み」こそが、症状なのではないか。心の病から回復するとは、以前の状態とは違う形の生き方を手に入れること。病を通り抜けることにより、生が変化し、これまでとは違う形で社会との折合いをつける。その時尠ともこの狂った世界も変るはずだ。
古書かつら洞(ktr)/結崎剛/鎌倉と大船にある立飲み屋「ヒグラシ文庫」に併設の本屋。酒飲みながら本について語らい、読み、買えます。

退屈をぶっとばせ!
Joshua Glenn & Elizabeth Foy Larsen 著、大網拓真、渡辺圭介 訳、オライリー・ジャパン
生活の楽しみが、スマホの中に閉じ込められている現代にぜひ読んでほしい1冊です。「スニーカーをデコる」、「自転車とスケボーを修理する」、「ゲームデザインを学ぶ」など、退屈な日々の中で、ちょっと自分でやってみる、本気で遊んでみるなど、様々なヒントが満載で、自立した大人になっていくために役に立つ情報が詰め込まれています。10代の子供たちに向けて書かれていますが、大人が読んでも好奇心をくすぐられる刺激的な内容です。一家に一冊、誰もが手に取れる場所に置いて、ふと目にしたページから新しい世界が広がっていくとおもしろいですね。
ひらすま書房/本居淳一/移動販売から始まり、現在は大正時代に建てられた郵便局の建物の1階で営業している富山の古本屋です。
生活の楽しみが、スマホの中に閉じ込められている現代にぜひ読んでほしい1冊です。「スニーカーをデコる」、「自転車とスケボーを修理する」、「ゲームデザインを学ぶ」など、退屈な日々の中で、ちょっと自分でやってみる、本気で遊んでみるなど、様々なヒントが満載で、自立した大人になっていくために役に立つ情報が詰め込まれています。10代の子供たちに向けて書かれていますが、大人が読んでも好奇心をくすぐられる刺激的な内容です。一家に一冊、誰もが手に取れる場所に置いて、ふと目にしたページから新しい世界が広がっていくとおもしろいですね。
ひらすま書房/本居淳一/移動販売から始まり、現在は大正時代に建てられた郵便局の建物の1階で営業している富山の古本屋です。

100年後あなたもわたしもいない日に
土門蘭 文 寺田マユミ 絵 文鳥社
この本の短歌は、日頃は気づかない「悲しさ」「切なさ」が身近にあると教えてくれる。そのうえでどうやって今を生きていくのか立ち止まって考えることができる。トリミングするような本のつくりも美しく、毎日が忙しいと感じている人に手にとってほしい一冊。
Andbooks/大谷正世/大阪北区にある間借り本屋。隣のカフェで本を読んで食べたくなったメニューも週替わりで提供中。
この本の短歌は、日頃は気づかない「悲しさ」「切なさ」が身近にあると教えてくれる。そのうえでどうやって今を生きていくのか立ち止まって考えることができる。トリミングするような本のつくりも美しく、毎日が忙しいと感じている人に手にとってほしい一冊。
Andbooks/大谷正世/大阪北区にある間借り本屋。隣のカフェで本を読んで食べたくなったメニューも週替わりで提供中。

闇市
マイク・モラスキー 編 新潮社
戦中から戦後にかけての闇市に関する文学作品を集めた本書、マイク・モラスキーによる素晴らしい編集方針によって、読み応えのある、しかし光を浴びてこなかった短篇たちを読むことが出来ました。アンソロジーかくあるべし、というお手本のような一冊。
BOOKS青いカバ/小国貴司/本駒込の古本屋・本屋です。駒込・千石から徒歩で来れます。巣鴨からの道も良いです。巣鴨からは、超高級住宅街を抜けて来られるので、それはそれで楽しいとも言えるし、うらやましいとも言えます。
戦中から戦後にかけての闇市に関する文学作品を集めた本書、マイク・モラスキーによる素晴らしい編集方針によって、読み応えのある、しかし光を浴びてこなかった短篇たちを読むことが出来ました。アンソロジーかくあるべし、というお手本のような一冊。
BOOKS青いカバ/小国貴司/本駒込の古本屋・本屋です。駒込・千石から徒歩で来れます。巣鴨からの道も良いです。巣鴨からは、超高級住宅街を抜けて来られるので、それはそれで楽しいとも言えるし、うらやましいとも言えます。

きみの存在を意識する
梨屋アリエ ポプラ社
本を読むことが困難な子、字を書くことに違和感を持つ子、過敏症で教室に行けない子など、「みんな」と違う子がその違いに対峙する連作短編集。この物語は困っている子には、寄り添い力となってくれるでしょう。作中には困っていることへの対処もエピソードとして織り込まれており、巻末には参考となる情報源も示されています。そしてこれは困っていない全ての人にも読んで欲しいものです。あなたの目に怠けているとワガママを言っていると見える人は、本当は困っているのかもしれない。その困ったことを取り除き助けられるとは限らない。でも困っていることを知ることにで、寄り添い救える心はきっとあります。そう気付かせてくれる物語です。
大吉堂/戸井律郎/大阪の古本屋。ヤングアダルトなど「10代の心(実年齢問わず)を刺激する本」を並べています。
本を読むことが困難な子、字を書くことに違和感を持つ子、過敏症で教室に行けない子など、「みんな」と違う子がその違いに対峙する連作短編集。この物語は困っている子には、寄り添い力となってくれるでしょう。作中には困っていることへの対処もエピソードとして織り込まれており、巻末には参考となる情報源も示されています。そしてこれは困っていない全ての人にも読んで欲しいものです。あなたの目に怠けているとワガママを言っていると見える人は、本当は困っているのかもしれない。その困ったことを取り除き助けられるとは限らない。でも困っていることを知ることにで、寄り添い救える心はきっとあります。そう気付かせてくれる物語です。
大吉堂/戸井律郎/大阪の古本屋。ヤングアダルトなど「10代の心(実年齢問わず)を刺激する本」を並べています。

かたちは思考する
平倉圭 東京大学出版会
筆者は伊藤亜紗さんとの対談の中で「僕は言葉に対する信頼が低いんです」と発言しているが、『かたちは思考する』は、言葉に対する信頼が低いが故に、出来合いの言葉ではなく、形象を見ることを通して内的に捻り出された言葉だけを駆使して書かれた芸術論。 凄絶な強度を持つ具体的な分析の数々に圧倒され、平伏するより他にないような苦しい感動が押し寄せる。緻密な分析は、私たちに還元主義的な解釈の正解を用意するのではない。私たちの身体は、この本を通して形象に巻き込まれ震動する。その魅惑を追体験できるだけでもこの本は圧倒的に読む意味がある。
とらきつね/鳥羽和久/福岡市、大濠公園のそばにある書店です。単位制高校や学習塾も併設しています。
筆者は伊藤亜紗さんとの対談の中で「僕は言葉に対する信頼が低いんです」と発言しているが、『かたちは思考する』は、言葉に対する信頼が低いが故に、出来合いの言葉ではなく、形象を見ることを通して内的に捻り出された言葉だけを駆使して書かれた芸術論。 凄絶な強度を持つ具体的な分析の数々に圧倒され、平伏するより他にないような苦しい感動が押し寄せる。緻密な分析は、私たちに還元主義的な解釈の正解を用意するのではない。私たちの身体は、この本を通して形象に巻き込まれ震動する。その魅惑を追体験できるだけでもこの本は圧倒的に読む意味がある。
とらきつね/鳥羽和久/福岡市、大濠公園のそばにある書店です。単位制高校や学習塾も併設しています。

をみなごのための 室生家の料理集
室生洲々子 龜鳴屋
室生犀星家に昔から伝わるお料理のレシピ集です。レシピ集といっても大さじ◯杯などの評価はあまり出てきません とても素朴で誰でも作れるような知っているようなお料理。確かに毎日の生活に在ったであろうお料理。そのレシピはもちろんですが、私のお勧めはこの本そのもの。和綴の製本、紙の手触り、添えられる武藤良子さんの版画絵。どこをとっても丁寧な仕事、愛着を持ってきちんと本を作る、その姿勢に感銘を受けました。
はるの文庫/はるのまひる/大阪箕面の古書店ひなたブックさんに間借中。古本中心に直取引の新刊本も少し。お山の中のとても気持ちの良い本屋です。
室生犀星家に昔から伝わるお料理のレシピ集です。レシピ集といっても大さじ◯杯などの評価はあまり出てきません とても素朴で誰でも作れるような知っているようなお料理。確かに毎日の生活に在ったであろうお料理。そのレシピはもちろんですが、私のお勧めはこの本そのもの。和綴の製本、紙の手触り、添えられる武藤良子さんの版画絵。どこをとっても丁寧な仕事、愛着を持ってきちんと本を作る、その姿勢に感銘を受けました。
はるの文庫/はるのまひる/大阪箕面の古書店ひなたブックさんに間借中。古本中心に直取引の新刊本も少し。お山の中のとても気持ちの良い本屋です。

弱さの思想
高橋源一郎・辻信一 大月書店
現在の社会システムに対する違和感を、この10年ほど自分の中で悶々と考えていました。それまで勤めていた山小屋での生活。一昨年に不慮の事故に見舞われた母親の介護。そして地元での久しぶりの長期生活の中で。元々は、高橋源一郎さんの祝島に関するツイートに感銘を受けたのが、この本を読んでみようと思ったきっかけです。一見マイナスにみえるようなものでも、視点を変えると驚くような強みになっていることがある。それは人でも、地域でも、社会全体でも。ただ活躍する時期や場所がまちまちなだけなんだよ、と本書に教えてもらいました。
逍遥館/森下亮平/埼玉の古本屋。ジョンソンタウンという米軍ハウス群の中に昨年末オープン。一軒家で、裏庭にミモザの木があります。
現在の社会システムに対する違和感を、この10年ほど自分の中で悶々と考えていました。それまで勤めていた山小屋での生活。一昨年に不慮の事故に見舞われた母親の介護。そして地元での久しぶりの長期生活の中で。元々は、高橋源一郎さんの祝島に関するツイートに感銘を受けたのが、この本を読んでみようと思ったきっかけです。一見マイナスにみえるようなものでも、視点を変えると驚くような強みになっていることがある。それは人でも、地域でも、社会全体でも。ただ活躍する時期や場所がまちまちなだけなんだよ、と本書に教えてもらいました。
逍遥館/森下亮平/埼玉の古本屋。ジョンソンタウンという米軍ハウス群の中に昨年末オープン。一軒家で、裏庭にミモザの木があります。

なにかが首のまわりに
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 著
くぼたのぞみ 訳 河出書房新社
主にアフリカ女性を中心に据えた、現実的な出来事が展開する短編集。著者の体験談では? と思えるようなエピソードもあり、未知の国、ナイジェリアの社会について知ることができた。登場人物の心の動きがよく伝わってきたのは、人間の思考は似たようなものだからか、翻訳の力か。死や暴力や差別が淡々と描かれるが、底に流れる怒りを感じた。様々な価値観や状況の中で、否定や反対にあっても、己の考えや生き方に誇りを持つことの大切さを再認識させられた。声高に叫ぶより、静かに諦めないことを教わり、閉塞感のある今、一筋の光を見つけたような気持ちになった。悲惨な話なのだが「ひそかな経験」が押しの一編。
駄々猫舎/駄々猫/自分が読み終えた本を次の読者へ繋げる事に喜びを感じる素人古本屋。猫本図書室準備中。
主にアフリカ女性を中心に据えた、現実的な出来事が展開する短編集。著者の体験談では? と思えるようなエピソードもあり、未知の国、ナイジェリアの社会について知ることができた。登場人物の心の動きがよく伝わってきたのは、人間の思考は似たようなものだからか、翻訳の力か。死や暴力や差別が淡々と描かれるが、底に流れる怒りを感じた。様々な価値観や状況の中で、否定や反対にあっても、己の考えや生き方に誇りを持つことの大切さを再認識させられた。声高に叫ぶより、静かに諦めないことを教わり、閉塞感のある今、一筋の光を見つけたような気持ちになった。悲惨な話なのだが「ひそかな経験」が押しの一編。
駄々猫舎/駄々猫/自分が読み終えた本を次の読者へ繋げる事に喜びを感じる素人古本屋。猫本図書室準備中。

映画大好きポンポさん 2
杉谷庄吾【人間プラモ】 KADOKAWA
前作の主人公ジーン・フィニ監督が、いろいろあってどん底に落ちた後、再び映画を撮るお話です。かなり疲れた時があって、その時に読み直したのですが、読み終えると同時に元気が湧いてきました。もう一回初心に帰ってやってみよう、やりたいことを追い求めてみようと。2019年もっとも力をもらった一冊です。また、この巻は第2巻。というわけで、メインストーリーを進めつつ「シリーズ映画の2作目によくある特徴」にも、ばっちり触れており、ストーリー構成も実に巧み。「映画大好き」と題名に入っているのは伊達じゃないですね。感情面・論理面、どちらの描写も素晴らしい作品です。1巻も含め、ぜひご一読を!
草深堂高洲店/学習指導空間リブレット/トビー(リブレット)/千葉県浦安市にある貸机付き学習参考書中心書店です。最近はアナログゲームを扱ったり、店付きの塾講師サービスもやってます。
前作の主人公ジーン・フィニ監督が、いろいろあってどん底に落ちた後、再び映画を撮るお話です。かなり疲れた時があって、その時に読み直したのですが、読み終えると同時に元気が湧いてきました。もう一回初心に帰ってやってみよう、やりたいことを追い求めてみようと。2019年もっとも力をもらった一冊です。また、この巻は第2巻。というわけで、メインストーリーを進めつつ「シリーズ映画の2作目によくある特徴」にも、ばっちり触れており、ストーリー構成も実に巧み。「映画大好き」と題名に入っているのは伊達じゃないですね。感情面・論理面、どちらの描写も素晴らしい作品です。1巻も含め、ぜひご一読を!
草深堂高洲店/学習指導空間リブレット/トビー(リブレット)/千葉県浦安市にある貸机付き学習参考書中心書店です。最近はアナログゲームを扱ったり、店付きの塾講師サービスもやってます。

ギリシャ語の時間
ハン・ガン 著 斎藤真理子 訳 晶文社
昨年ハン・ガンの『菜食主義者』という小説が話題になり、それを読んだらこの作品にも出会ってしまった。どちらが読みやすいかは好みの問題だが、日本の地方で血縁的な関係に縛られて生きている身には、韓国の女性の置かれた立場は、砂地に水がしみこむように自然な理解が可能だった。『中動態の世界―意志と責任の考古学』(國分功一郎、医学書院)を読んでいたので、小説でも「中動態」の世界を表現できるのだという事実に目を開かされ、迷ったが『ギリシャ語の時間』のほうを昨年の一冊として推薦します。
古本LOGOS(ロゴス)/川端ゆかり/奥能登の古本屋です。実店舗OPENは月1、2回でしたが組合加盟の古書店です。今年は稼ぎたいです。
昨年ハン・ガンの『菜食主義者』という小説が話題になり、それを読んだらこの作品にも出会ってしまった。どちらが読みやすいかは好みの問題だが、日本の地方で血縁的な関係に縛られて生きている身には、韓国の女性の置かれた立場は、砂地に水がしみこむように自然な理解が可能だった。『中動態の世界―意志と責任の考古学』(國分功一郎、医学書院)を読んでいたので、小説でも「中動態」の世界を表現できるのだという事実に目を開かされ、迷ったが『ギリシャ語の時間』のほうを昨年の一冊として推薦します。
古本LOGOS(ロゴス)/川端ゆかり/奥能登の古本屋です。実店舗OPENは月1、2回でしたが組合加盟の古書店です。今年は稼ぎたいです。

空から森が降ってくる
小手鞠るい 平凡社
ニューヨーク、ウッドストックの森に住む作家、小手鞠るい。日本でやなせたかし氏に師事していたある時、森に誘われるかのように海を越える。小さな池のほとりに居を構え、そこで暮らす動物や自然の中で愛をもって暮らす日々が綴られている。愛猫を亡くした夫婦の悲しみは手のひらに乗せるには重く、心には果てしない。描写が美しく読み進むうちに、森の葉を踏む音、雪の冷たさ、木漏れ日の光を浴びる名もなき花を感じて欲しい。
えほんのみせ ぱっきゃまらーど/山本陽子/世田谷区松陰神社前にある絵本メインの児童書店です。絵本専門士として子どもだけでなくおとなの方にも絵本を楽しんでもらいたいです。
ニューヨーク、ウッドストックの森に住む作家、小手鞠るい。日本でやなせたかし氏に師事していたある時、森に誘われるかのように海を越える。小さな池のほとりに居を構え、そこで暮らす動物や自然の中で愛をもって暮らす日々が綴られている。愛猫を亡くした夫婦の悲しみは手のひらに乗せるには重く、心には果てしない。描写が美しく読み進むうちに、森の葉を踏む音、雪の冷たさ、木漏れ日の光を浴びる名もなき花を感じて欲しい。
えほんのみせ ぱっきゃまらーど/山本陽子/世田谷区松陰神社前にある絵本メインの児童書店です。絵本専門士として子どもだけでなくおとなの方にも絵本を楽しんでもらいたいです。

薬物依存症
松本俊彦 筑摩書房
本人の心構えの問題にされがちな薬物の問題が「依存症」という病である事。薬物使用が犯罪とされる事で当事者が孤立を深め快復から遠ざかってしまう現状を専門医の立場からわかりやすく説いた本です。一昨年刊行の書籍ですが、薬物犯罪の報道がかびすましい今こそ読まれるべき一冊なので。松本先生は自傷行為の専門家でもあり、自傷行為のメカニズムには依存症と共通する点も多いので、自傷の当事者さんにも参考になるかと(自傷に関する著書も複数出されてますが講談社の「自傷・自殺のことがわかる本」がコンパクトでおすすめ)。
むかで屋ブックス/河合南/趣味で本屋さんをやっています。今年の目標はエモい中年になること。
本人の心構えの問題にされがちな薬物の問題が「依存症」という病である事。薬物使用が犯罪とされる事で当事者が孤立を深め快復から遠ざかってしまう現状を専門医の立場からわかりやすく説いた本です。一昨年刊行の書籍ですが、薬物犯罪の報道がかびすましい今こそ読まれるべき一冊なので。松本先生は自傷行為の専門家でもあり、自傷行為のメカニズムには依存症と共通する点も多いので、自傷の当事者さんにも参考になるかと(自傷に関する著書も複数出されてますが講談社の「自傷・自殺のことがわかる本」がコンパクトでおすすめ)。
むかで屋ブックス/河合南/趣味で本屋さんをやっています。今年の目標はエモい中年になること。

用事のない旅
森まゆみ、産業編集センター
旅に出るなら一人旅。観光案内所で地図を一枚もらったら、自身の直感を頼りに歩き出す。ガイドブックはまず見ない―かつて『谷根千』を手掛けた名編集者による旅エッセイ集。しなやかに行動する旅の達人による一人旅の流儀は軽やかでカッコイイ。10年以上前の文章が多いのに古さを全く感じないのは名エッセイストの感性と筆のなせる技。当店に本当にぴったり合う本で、発売直後より時間が経つ程にじわじわと売れ行きを伸ばした〈ポルベニールのじわ売れ本〉の筆頭格となりました。
ポルベニールブックストア/金野典彦/大船駅東口から徒歩6分、個人営業の〝風通しのいい〟新刊書店。ペンギンが目印!
旅に出るなら一人旅。観光案内所で地図を一枚もらったら、自身の直感を頼りに歩き出す。ガイドブックはまず見ない―かつて『谷根千』を手掛けた名編集者による旅エッセイ集。しなやかに行動する旅の達人による一人旅の流儀は軽やかでカッコイイ。10年以上前の文章が多いのに古さを全く感じないのは名エッセイストの感性と筆のなせる技。当店に本当にぴったり合う本で、発売直後より時間が経つ程にじわじわと売れ行きを伸ばした〈ポルベニールのじわ売れ本〉の筆頭格となりました。
ポルベニールブックストア/金野典彦/大船駅東口から徒歩6分、個人営業の〝風通しのいい〟新刊書店。ペンギンが目印!

ぼくにきづいたひ
杉山亮 作 片山健 絵 理論社
いったい何について書かれた本なのだろう。タイトルからすると、自我というものに目覚めたときのことを書いているのかと思うけど、自分は気づいたらいつの間にか自分だったので覚えていない。覚えている人はいるのだろうか。何だかまるで悟りの瞬間が描かれているようにさえ思う。自分というものに気づくことは、悟りのようなものなのかもしれない。遠い夏の日をぼんやりと思い出すような絵も印象的。こういう内容の本が児童書として出されているのもすごい。
クマヒコ書房/吉村哲/何かしら絵のある本を主に扱うイベント出店の古本屋。関西を中心に活動中。店主自身も絵を描きます。
いったい何について書かれた本なのだろう。タイトルからすると、自我というものに目覚めたときのことを書いているのかと思うけど、自分は気づいたらいつの間にか自分だったので覚えていない。覚えている人はいるのだろうか。何だかまるで悟りの瞬間が描かれているようにさえ思う。自分というものに気づくことは、悟りのようなものなのかもしれない。遠い夏の日をぼんやりと思い出すような絵も印象的。こういう内容の本が児童書として出されているのもすごい。
クマヒコ書房/吉村哲/何かしら絵のある本を主に扱うイベント出店の古本屋。関西を中心に活動中。店主自身も絵を描きます。

生まれ変わり
ケン・リュウ 早川書房
本を読むことの醍醐味は沢山あると思いますが、1つには作品の世界にどっぷりとのめり込むことかと思います。最近悪い意味で本を読むことへの慣れ、のようなものが出てきて作品の世界に没頭するような高揚感が減ってきたと感じ、悲しくなる時があります。そんな時、私を作者の思惑、作品の世界の中に引き摺り込み、ページを追う事しか考えられないくらい没頭させてくれたのがこちらの『生まれ変わり』です。そのような時間はまさに至福、というものではないでしょうか。これだ!この感じ久しぶり! ととてもワクワクした覚えがあります。このワクワクだけが本の楽しさとは言いません。エッセイを読み自分の生き方に迷った時の指針になる本や、写真集を眺めてその色彩や風景にぐっとくるなどなど、多彩な楽しみ方があるのが本の良いところです。でも、日常を忘れて没頭したい時があったら、こちらの本を私はお勧め致します。
BOOKS凡/あつこ/間借り本屋をしています。本屋好きです。
本を読むことの醍醐味は沢山あると思いますが、1つには作品の世界にどっぷりとのめり込むことかと思います。最近悪い意味で本を読むことへの慣れ、のようなものが出てきて作品の世界に没頭するような高揚感が減ってきたと感じ、悲しくなる時があります。そんな時、私を作者の思惑、作品の世界の中に引き摺り込み、ページを追う事しか考えられないくらい没頭させてくれたのがこちらの『生まれ変わり』です。そのような時間はまさに至福、というものではないでしょうか。これだ!この感じ久しぶり! ととてもワクワクした覚えがあります。このワクワクだけが本の楽しさとは言いません。エッセイを読み自分の生き方に迷った時の指針になる本や、写真集を眺めてその色彩や風景にぐっとくるなどなど、多彩な楽しみ方があるのが本の良いところです。でも、日常を忘れて没頭したい時があったら、こちらの本を私はお勧め致します。
BOOKS凡/あつこ/間借り本屋をしています。本屋好きです。

リンさんの小さな子
フィリップ・クローデル、訳)高橋啓、みすず書房
愛する者を失った痛み。同じテーマで全く異なるアプローチの作品を読んだ。ソナーリ・デラニヤガラ著『波』。津波で家族を失った経済学者の綴る記録。根気強く言葉を綴ることで読み手と痛みを共感し再生していく。著者の聡明さと言葉の力に心打たれた。ところがこの本の主人公リンさんは戦争で息子夫婦を失った難民の老人で、遺された赤ん坊の孫娘を連れて言葉の通じない欧州に逃れる。折角友となったバルクさんにも自分と孫娘の名前すら伝えられず、僅かに交わされる言葉すら行き違う。語り口も淡々と進んでいくその先に……。本来は翻訳者泣かせの複雑な文体だという著者が、切り詰めた言葉で起こす力強い奇跡を是非読んで欲しい。
書肆ねっこ堂/佐藤由/いつか雪国でふるほんや、今は流しのふるほんやです。
愛する者を失った痛み。同じテーマで全く異なるアプローチの作品を読んだ。ソナーリ・デラニヤガラ著『波』。津波で家族を失った経済学者の綴る記録。根気強く言葉を綴ることで読み手と痛みを共感し再生していく。著者の聡明さと言葉の力に心打たれた。ところがこの本の主人公リンさんは戦争で息子夫婦を失った難民の老人で、遺された赤ん坊の孫娘を連れて言葉の通じない欧州に逃れる。折角友となったバルクさんにも自分と孫娘の名前すら伝えられず、僅かに交わされる言葉すら行き違う。語り口も淡々と進んでいくその先に……。本来は翻訳者泣かせの複雑な文体だという著者が、切り詰めた言葉で起こす力強い奇跡を是非読んで欲しい。
書肆ねっこ堂/佐藤由/いつか雪国でふるほんや、今は流しのふるほんやです。

Eraser けしゴム
まどみちお 詩 美智子 選・訳 文藝春秋
「けしゴム」というタイトルと美しい佇まいに、思わず手に取った本。まど・みちおさんの作品の中から美智子さまが選び、英訳した温かくユーモアのある21篇の詩が収録されています。装丁・挿絵は安野光雅さん。わずかな言葉とほんのちょっとの挿絵、そして余白から情景が浮かび、ちょっと笑えたり共感できたり、日本語と英語の言葉選びによる印象の違いを楽しめたり……。「けしゴム」をはじめ、「かいだん」「キリン」「いびき」「キャベツ」など、日常の中にあるちょっとした身近なモノ・コト。そこから、見方や捉え方、表現ひとつでこれほどの奥行きが出て、想像を超えた展開に繋がる。ものすごく贅沢で、豊かな気持ちになれる作品です。
文具物語/山田容子/文房具が登場する本だけを集めた専門書店。店主は文房具をこよなく愛する書籍編集者(出版社所属)です。
「けしゴム」というタイトルと美しい佇まいに、思わず手に取った本。まど・みちおさんの作品の中から美智子さまが選び、英訳した温かくユーモアのある21篇の詩が収録されています。装丁・挿絵は安野光雅さん。わずかな言葉とほんのちょっとの挿絵、そして余白から情景が浮かび、ちょっと笑えたり共感できたり、日本語と英語の言葉選びによる印象の違いを楽しめたり……。「けしゴム」をはじめ、「かいだん」「キリン」「いびき」「キャベツ」など、日常の中にあるちょっとした身近なモノ・コト。そこから、見方や捉え方、表現ひとつでこれほどの奥行きが出て、想像を超えた展開に繋がる。ものすごく贅沢で、豊かな気持ちになれる作品です。
文具物語/山田容子/文房具が登場する本だけを集めた専門書店。店主は文房具をこよなく愛する書籍編集者(出版社所属)です。

急に具合が悪くなる
宮野真生子・磯野真穂 晶文社
凄まじい、の一言に尽きる。がんを患った哲学者と、たまたま知り合った文化人類学者の間で交わされた往復書簡。前半は穏やかな調子で医療に関する考察が進められるが、後半になると〝急に具合が悪くなる〟。「その時」をしっかりと見据えながらも、飛び交う言葉は熱を帯び、エネルギーに満ち溢れていく。この二人でなくては為し得なかったであろう、魂の交流に脱帽。
紀伊國屋書店札幌本店/K/洋書・芸術書担当。洋書はClassicsと絵本に力が入っています。芸術書は新刊台をご覧下さい。
凄まじい、の一言に尽きる。がんを患った哲学者と、たまたま知り合った文化人類学者の間で交わされた往復書簡。前半は穏やかな調子で医療に関する考察が進められるが、後半になると〝急に具合が悪くなる〟。「その時」をしっかりと見据えながらも、飛び交う言葉は熱を帯び、エネルギーに満ち溢れていく。この二人でなくては為し得なかったであろう、魂の交流に脱帽。
紀伊國屋書店札幌本店/K/洋書・芸術書担当。洋書はClassicsと絵本に力が入っています。芸術書は新刊台をご覧下さい。

古くてあたらしい仕事
島田潤一郎 新潮社
仕事をするということはどういう事か、本をつくるということはどういう事か。という前に、人間の本質が書かれているようで、本関係の仕事以外の人達にも少なからず共感する部分や何らかの気づきがあるはず。そのひとまわり小ぶりなこの本を手に取っただけで、著者である島田さんのやさしさが伝わってきます。ページを開けばその言葉一つ一つがやさしく読者に浸透していくでしょう。なぜこの本はここまで心を揺さぶるのか。それは愚直に具体的な誰かを思って本づくりをしている島田さんの言葉だからこそなのかもしれない。これからの生き方を考える為に、全ての人に触れてもらいたい1冊です。
CAFEめがね書房/店主/三重県の山に囲まれたギャラリーを併設したひとりでやっている小さなブックカフェです。
仕事をするということはどういう事か、本をつくるということはどういう事か。という前に、人間の本質が書かれているようで、本関係の仕事以外の人達にも少なからず共感する部分や何らかの気づきがあるはず。そのひとまわり小ぶりなこの本を手に取っただけで、著者である島田さんのやさしさが伝わってきます。ページを開けばその言葉一つ一つがやさしく読者に浸透していくでしょう。なぜこの本はここまで心を揺さぶるのか。それは愚直に具体的な誰かを思って本づくりをしている島田さんの言葉だからこそなのかもしれない。これからの生き方を考える為に、全ての人に触れてもらいたい1冊です。
CAFEめがね書房/店主/三重県の山に囲まれたギャラリーを併設したひとりでやっている小さなブックカフェです。

きょうはマラカスのひ
樋勝朋己、福音館書店
私は絵本屋で働いています。「きょうはマラカスのひ」を声に出して読むのが大好きです。来店されたお客さまに読んで差し上げると笑ってくださり、「楽しいね」「癒やされるね」と言ってくださいます。私も毎回楽しい気分になるのでこの絵本が大好きです。
えほんや なずな/スタッフ よしえ/対象は赤ちゃんから大人の方まで。店主「いちみちゃん」とスタッフがお待ちしています。おしゃべりをしにいらして下さいね。
私は絵本屋で働いています。「きょうはマラカスのひ」を声に出して読むのが大好きです。来店されたお客さまに読んで差し上げると笑ってくださり、「楽しいね」「癒やされるね」と言ってくださいます。私も毎回楽しい気分になるのでこの絵本が大好きです。
えほんや なずな/スタッフ よしえ/対象は赤ちゃんから大人の方まで。店主「いちみちゃん」とスタッフがお待ちしています。おしゃべりをしにいらして下さいね。

分解の哲学―腐敗と発酵をめぐる思考―
藤原辰史 青土社
冒頭のエッセイから生態学における「分解」を定義し、「もの」の腐敗を視座に人間の営みを分解する試みに入っていく流れにとてもワクワクします。ゲームの世界ではレベルを上げれば物理で殴る効力も増大しますが、読書は知識で殴られてレベルを上げていただく作業だと再確認しました。
書肆スーベニア/酒井隆/スカイツリーに割と近いところにある本屋です。古本と新刊があります。
冒頭のエッセイから生態学における「分解」を定義し、「もの」の腐敗を視座に人間の営みを分解する試みに入っていく流れにとてもワクワクします。ゲームの世界ではレベルを上げれば物理で殴る効力も増大しますが、読書は知識で殴られてレベルを上げていただく作業だと再確認しました。
書肆スーベニア/酒井隆/スカイツリーに割と近いところにある本屋です。古本と新刊があります。

スタンリーとちいさな火星人
サイモン・ジェームズ(作)、千葉茂樹(訳)、あすなろ書房
大好きなお母さんが、仕事でひと晩帰ってこないなんて! ホントは行かないでって言いたいんだろうね、でもお仕事なんだから、我慢しなきゃいけないこともわかってる……。そんなときには火星人と入れ替わる、なんて素敵なアイデアなんでしょう! 地球のルールで生きてないんだから、お風呂に入らないのも仕方ない。火星人を受け入れてくれる家族が、とても優しくていいです。親目線で読むと、ひと晩くらい火星人でいることを許してあげられる度量に、敬服です。
えほんや なずな/スタッフ ななえ/地域の親子連れに人気の、絵本のお店です。おはなし会もやってます。
大好きなお母さんが、仕事でひと晩帰ってこないなんて! ホントは行かないでって言いたいんだろうね、でもお仕事なんだから、我慢しなきゃいけないこともわかってる……。そんなときには火星人と入れ替わる、なんて素敵なアイデアなんでしょう! 地球のルールで生きてないんだから、お風呂に入らないのも仕方ない。火星人を受け入れてくれる家族が、とても優しくていいです。親目線で読むと、ひと晩くらい火星人でいることを許してあげられる度量に、敬服です。
えほんや なずな/スタッフ ななえ/地域の親子連れに人気の、絵本のお店です。おはなし会もやってます。

ある晴れた夏の朝
小手毬るい 偕成社
今年の読書感想文全国コンクールは、この作品を課題図書に選んだ時点で成功でした。のちの小学館児童出版文学賞受賞も納得です。出自の違うアメリカ人の少年少女たちがサマースクールの公開討論会に挑む。テーマは原爆の是非。日本人の我々はあの戦争や原爆が何をもたらしたか、教育の過程で学習しているし一定の価値観を共有している。それを日系を含めたルーツの違うアメリカ人という全く違う視点から検証することで、揺さぶってくる。もちろん、彼らも討論を通して葛藤し、手探りで自分のうちの真実を探す。民族人種間の違い、言語観の違い、文化の違い、歴史認識の違いなど様々な違いが、読者に提示される。そしてそれは戦争や原爆の是非を越えてもっと大きな問題を示唆していく。ぜひ、中学生以上の方に手に取ってもらいたい本です。
草深堂高洲店/学習指導空間リブレット/草深雄史(草深堂)/千葉県浦安市にある貸机付き学習参考書中心書店です。最近はアナログゲーム扱ったり、店付きの塾講師サービスもやってます。
今年の読書感想文全国コンクールは、この作品を課題図書に選んだ時点で成功でした。のちの小学館児童出版文学賞受賞も納得です。出自の違うアメリカ人の少年少女たちがサマースクールの公開討論会に挑む。テーマは原爆の是非。日本人の我々はあの戦争や原爆が何をもたらしたか、教育の過程で学習しているし一定の価値観を共有している。それを日系を含めたルーツの違うアメリカ人という全く違う視点から検証することで、揺さぶってくる。もちろん、彼らも討論を通して葛藤し、手探りで自分のうちの真実を探す。民族人種間の違い、言語観の違い、文化の違い、歴史認識の違いなど様々な違いが、読者に提示される。そしてそれは戦争や原爆の是非を越えてもっと大きな問題を示唆していく。ぜひ、中学生以上の方に手に取ってもらいたい本です。
草深堂高洲店/学習指導空間リブレット/草深雄史(草深堂)/千葉県浦安市にある貸机付き学習参考書中心書店です。最近はアナログゲーム扱ったり、店付きの塾講師サービスもやってます。

大きな字で書くこと
加藤典洋、岩波書店
昨年亡くなった文芸評論家の遺稿集。編集者に注意されるほどの小さな字で密度の濃い文章を書き続けてきた加藤先生が、もっと大きな字で書いていた幼い頃のようにシンプルにと、この二年間に書き連ねた文章。読み進めるほどに、ひとりの文筆家の人生と仕事のつながりが感じられていくようでした。かつて愛用していたというB6判四〇〇字詰めの原稿用紙、今は手に入らない。しかし、読後ぼんやりと本にさわっていて、ふと気づいたことがひとつ。四六判変型のこの小さな本、文章が印刷された版面が、ちょうどB6判くらいなのではないか……。愛用の原稿用紙に、「大きな字で」書かれているのだと思いました。測ってみてください。
トンガ坂文庫/豊田宙也/三重県尾鷲市の漁村・九鬼町の小さな路地「トンガ坂」にぽつりとたたずむ本屋です。
昨年亡くなった文芸評論家の遺稿集。編集者に注意されるほどの小さな字で密度の濃い文章を書き続けてきた加藤先生が、もっと大きな字で書いていた幼い頃のようにシンプルにと、この二年間に書き連ねた文章。読み進めるほどに、ひとりの文筆家の人生と仕事のつながりが感じられていくようでした。かつて愛用していたというB6判四〇〇字詰めの原稿用紙、今は手に入らない。しかし、読後ぼんやりと本にさわっていて、ふと気づいたことがひとつ。四六判変型のこの小さな本、文章が印刷された版面が、ちょうどB6判くらいなのではないか……。愛用の原稿用紙に、「大きな字で」書かれているのだと思いました。測ってみてください。
トンガ坂文庫/豊田宙也/三重県尾鷲市の漁村・九鬼町の小さな路地「トンガ坂」にぽつりとたたずむ本屋です。

ヒト夜の永い夢
柴田勝家 早川書房
南方熊楠を主人公にした歴史改変奇伝、粘菌パンクSFとも言える作品。和歌山の書店が推さずに誰が押す!? 舞台は昭和初期。亡くなった歌劇団の少女の遺体は、熊楠が発明した粘菌稼働のAIを搭載した自動人形として蘇る。南方熊楠や、宮沢賢治、江戸川乱歩、佐藤春夫といった文人、また千里眼事件で帝大を追われた福来友吉らオカルト研究者達など、実在の名士が多数登場する、史実と虚構が入り混じる物語は、やがては暴走を始めた自動人形と共に、夢と現実、知と因果が絡み合いながら、二二六前夜の帝都東京を目指す。
本屋プラグ/三木早也佳・嶋田詔太/和歌山市内で新刊書と古本の両方を扱う、普通の町の書店です。
南方熊楠を主人公にした歴史改変奇伝、粘菌パンクSFとも言える作品。和歌山の書店が推さずに誰が押す!? 舞台は昭和初期。亡くなった歌劇団の少女の遺体は、熊楠が発明した粘菌稼働のAIを搭載した自動人形として蘇る。南方熊楠や、宮沢賢治、江戸川乱歩、佐藤春夫といった文人、また千里眼事件で帝大を追われた福来友吉らオカルト研究者達など、実在の名士が多数登場する、史実と虚構が入り混じる物語は、やがては暴走を始めた自動人形と共に、夢と現実、知と因果が絡み合いながら、二二六前夜の帝都東京を目指す。
本屋プラグ/三木早也佳・嶋田詔太/和歌山市内で新刊書と古本の両方を扱う、普通の町の書店です。

アルティストは花を踏まない
小日向まるこ 小学館
第二次世界大戦前のフランスが舞台。小さな町に暮らす子供たちと個性的な人々が物語の中心。暗さを増してゆく時代、それぞれに抱えた困難。でも、そこに小さな希望が示される瞬間が訪れる……。絵もストーリーも驚愕のクオリティ。大切なことをそっと教えてくれる、宝物のようなコミックです。
敷島書房/一條宣好/山梨県甲斐市にある小さな本屋です。ことし創業50周年を迎えました。/山梨県甲斐市中下条660
第二次世界大戦前のフランスが舞台。小さな町に暮らす子供たちと個性的な人々が物語の中心。暗さを増してゆく時代、それぞれに抱えた困難。でも、そこに小さな希望が示される瞬間が訪れる……。絵もストーリーも驚愕のクオリティ。大切なことをそっと教えてくれる、宝物のようなコミックです。
敷島書房/一條宣好/山梨県甲斐市にある小さな本屋です。ことし創業50周年を迎えました。/山梨県甲斐市中下条660

本屋がアジアをつなぐ
石橋毅史、ころから
いまからバカみたいなことを書きますけれど、ただただ「アジア」はつながっているんだ、と。歴史的にも地理的にもつながっているのに、わざわざ言われないと気づかないとかやばいなぁと思ったりしたのでした。国の事情は違えど、一番感じ入るのはみんな「本屋」であること。同じ思いで本を売っていること。あらためて、本屋の仕事を振り返るきっかけにもなりました。あと、24時間営業の本屋を体験するために、自分も24時間居座ってみるとか、ぼくは石橋さんの、そういうところが好きです。
H.A.Bookstore/松井祐輔/蔵前の本屋です。出版と取次もやっています。今年は稼ぎたいです。
いまからバカみたいなことを書きますけれど、ただただ「アジア」はつながっているんだ、と。歴史的にも地理的にもつながっているのに、わざわざ言われないと気づかないとかやばいなぁと思ったりしたのでした。国の事情は違えど、一番感じ入るのはみんな「本屋」であること。同じ思いで本を売っていること。あらためて、本屋の仕事を振り返るきっかけにもなりました。あと、24時間営業の本屋を体験するために、自分も24時間居座ってみるとか、ぼくは石橋さんの、そういうところが好きです。
H.A.Bookstore/松井祐輔/蔵前の本屋です。出版と取次もやっています。今年は稼ぎたいです。

出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと
花田奈々子、河出書房新社
WEBマガジン「温度」で連載当時大反響を呼び書籍化~さらに文庫化された「実録私小説」。書店員として膨大な本の知識を持つ著者が、離婚の危機に瀕して家を出る。そして彼女が自分に課したのは不特定多数の相手に合いそうな本を勧めるという「修行」だった。驚きと不安がないまぜになった日々の中でやがて著者が見いだしたものとは。ひりひりしたスリルと突破口のない徒労感に共感しながら、ブックガイドとしても楽しめる。飾り気のない淡々とした文体がとてもいい。
ホリデイ書店/宮本ひろみ/古本と新刊書と珈琲と。本と人をつなぐ店でありたいです!
WEBマガジン「温度」で連載当時大反響を呼び書籍化~さらに文庫化された「実録私小説」。書店員として膨大な本の知識を持つ著者が、離婚の危機に瀕して家を出る。そして彼女が自分に課したのは不特定多数の相手に合いそうな本を勧めるという「修行」だった。驚きと不安がないまぜになった日々の中でやがて著者が見いだしたものとは。ひりひりしたスリルと突破口のない徒労感に共感しながら、ブックガイドとしても楽しめる。飾り気のない淡々とした文体がとてもいい。
ホリデイ書店/宮本ひろみ/古本と新刊書と珈琲と。本と人をつなぐ店でありたいです!

Ank: a mirroring ape
佐藤究 講談社
とても現実的な暴動の描写に引き込まれる。目をそらしたくなるのについついページをめくる手は止まらない。佐藤究はそういうことをする。ドラマティックに映像が進むからほぼほぼ一気読みしてしまった。Almost zombie(ほとんどゾンビ)と呼ばれるほどに狂った人類の起す京都暴動(キョートライオット)、鏡(Ank)という名の類人猿。一見全く関係ないような話がいつの間にかしっかりと理論づけられた情報で結びつき、納得し感嘆する。進化を紐解き、本能をくすぐられる珠玉のSF小説。
紅玉喫茶/珠々/学生が運営するウェブ上の選書専門店です。2020年から活動し始めたぴちぴちの本屋です。
とても現実的な暴動の描写に引き込まれる。目をそらしたくなるのについついページをめくる手は止まらない。佐藤究はそういうことをする。ドラマティックに映像が進むからほぼほぼ一気読みしてしまった。Almost zombie(ほとんどゾンビ)と呼ばれるほどに狂った人類の起す京都暴動(キョートライオット)、鏡(Ank)という名の類人猿。一見全く関係ないような話がいつの間にかしっかりと理論づけられた情報で結びつき、納得し感嘆する。進化を紐解き、本能をくすぐられる珠玉のSF小説。
紅玉喫茶/珠々/学生が運営するウェブ上の選書専門店です。2020年から活動し始めたぴちぴちの本屋です。

老いゆく団地 ある都営住宅の高齢化と建替え
朴承賢 森話社
東京・北区赤羽―最近人気となっている地の高台には、2つの大きな団地がある。その一つが都営桐ヶ丘団地で、今は建て替えが終了してオサレになった。この団地は、戦後に計画されて昭和30年代(1955-1964)から建築が進められ、憧れの「団地ライフ」、ダイニングキッチンのある、家族だんらんの暮らしができる最先端の場所として君臨した。さまざまな条件を乗り越えて、ここに住戸を獲得した家族は、自治会などを積極的に運営し、コミュニティを団地の中で作り上げた。しかし、子どもが成長し自身は高齢になり、何度も起きる建て替えの話でコミュニティの変質が起こった。そうした変化の様相を豊富な聞き取りを踏まえてまとめた労作。超高齢社会での生き方を考える一助となるか。
やまね洞/やまね洞の猫店員/古本メインの、ひとり本屋です。無店舗。店長、やまねくんと一緒に本に埋もれています。
東京・北区赤羽―最近人気となっている地の高台には、2つの大きな団地がある。その一つが都営桐ヶ丘団地で、今は建て替えが終了してオサレになった。この団地は、戦後に計画されて昭和30年代(1955-1964)から建築が進められ、憧れの「団地ライフ」、ダイニングキッチンのある、家族だんらんの暮らしができる最先端の場所として君臨した。さまざまな条件を乗り越えて、ここに住戸を獲得した家族は、自治会などを積極的に運営し、コミュニティを団地の中で作り上げた。しかし、子どもが成長し自身は高齢になり、何度も起きる建て替えの話でコミュニティの変質が起こった。そうした変化の様相を豊富な聞き取りを踏まえてまとめた労作。超高齢社会での生き方を考える一助となるか。
やまね洞/やまね洞の猫店員/古本メインの、ひとり本屋です。無店舗。店長、やまねくんと一緒に本に埋もれています。

わたしを空腹にしないほうがいい 改訂版
くどうれいん BOOKNERD
2016年6月の一か月と、一年後の2017年6月の数日。その期間に料理したもの、食べたもの、思い出の味、そういったものを綴った本。語り口はリズミカル。満足そうに、どこか必死に、なんだかんだと食べている。その日常の愛おしさ。美味しそうと涎を垂らし、苦しそうと眉を寄せ、ああ、なんか分かる、と呟く自分がいた。きっとみんながそうなる気がする。「苦しくても悲しくてもコートの中では平気」。某バレーアニメの主題歌を聴いた時、そんな場所があったらいいなあ、と子どもながらに思った。この本を読んだ時、なぜかそのことを思い出した。彼女にとって、それは料理なのかな。私はまだその場所を知らず、少し羨ましい。
コロモ書房/セキヤ/新潟県内の一箱古本市やイベントで本を広げています。西荻窪のBREWBOOKSさんで間借りもしています。
2016年6月の一か月と、一年後の2017年6月の数日。その期間に料理したもの、食べたもの、思い出の味、そういったものを綴った本。語り口はリズミカル。満足そうに、どこか必死に、なんだかんだと食べている。その日常の愛おしさ。美味しそうと涎を垂らし、苦しそうと眉を寄せ、ああ、なんか分かる、と呟く自分がいた。きっとみんながそうなる気がする。「苦しくても悲しくてもコートの中では平気」。某バレーアニメの主題歌を聴いた時、そんな場所があったらいいなあ、と子どもながらに思った。この本を読んだ時、なぜかそのことを思い出した。彼女にとって、それは料理なのかな。私はまだその場所を知らず、少し羨ましい。
コロモ書房/セキヤ/新潟県内の一箱古本市やイベントで本を広げています。西荻窪のBREWBOOKSさんで間借りもしています。

kaze no tanbun 特別ではない一日
柏書房
「短文のアンソロジー」というふしぎな本なのだが、めくっている間に私はそのジャンルを越えたジャンルの虜となり、ついにフードファイトをはじめてしまった。ファミレスの隅に陣取り、メニューの中からひと皿だけ頼み念入りに食すまでが開始の儀式。戦いにおいて問われるのは速度や量ではなく、その後の数分で書く、食べ物を題材とした短文の方だ。この遊びを最近よく友達とするのだが、小説やエッセイなどという形を限定しないので誰とでも楽しめる。「短文」という言葉の発明は、地球と別の星を結ぶUFOの出現に等しい。驚きながらめくれば、短文に圧倒され胸がいっぱいになる。いつまでも読み終わらないので、ずっと持ち歩いていられる。
ほんやのほ/伊川佐保子/日本橋大伝馬町のビルの二階に位置する会員制本屋です。二月現在冬眠中。夏までには目を覚まします、多分。
「短文のアンソロジー」というふしぎな本なのだが、めくっている間に私はそのジャンルを越えたジャンルの虜となり、ついにフードファイトをはじめてしまった。ファミレスの隅に陣取り、メニューの中からひと皿だけ頼み念入りに食すまでが開始の儀式。戦いにおいて問われるのは速度や量ではなく、その後の数分で書く、食べ物を題材とした短文の方だ。この遊びを最近よく友達とするのだが、小説やエッセイなどという形を限定しないので誰とでも楽しめる。「短文」という言葉の発明は、地球と別の星を結ぶUFOの出現に等しい。驚きながらめくれば、短文に圧倒され胸がいっぱいになる。いつまでも読み終わらないので、ずっと持ち歩いていられる。
ほんやのほ/伊川佐保子/日本橋大伝馬町のビルの二階に位置する会員制本屋です。二月現在冬眠中。夏までには目を覚まします、多分。

木下直之を全ぶ集めた
木下直之 晶文社
私の目に映る町は、実は様々な時代の痕跡のパッチワーク。木下先生に痕跡の見抜き方を教われば、世界は変わる。遠い時代にタイムリープできてしまうのだ。お城があるなら天守閣に登ってみよう、記念碑の根元を掘ってみよう。わざわざ遠くに出かけなくても刺激に満ちた旅ができる。やがて立ち現れるのは日本人の国民性……。美術史家・木下直之先生が、30年の研究生活で著した主な著書11冊を自ら解説しています。気になった本をじっくり読めばさらに世界が広がります。
マルト書店/田中玲子/新潟県内で一箱古本市に出店しています。
私の目に映る町は、実は様々な時代の痕跡のパッチワーク。木下先生に痕跡の見抜き方を教われば、世界は変わる。遠い時代にタイムリープできてしまうのだ。お城があるなら天守閣に登ってみよう、記念碑の根元を掘ってみよう。わざわざ遠くに出かけなくても刺激に満ちた旅ができる。やがて立ち現れるのは日本人の国民性……。美術史家・木下直之先生が、30年の研究生活で著した主な著書11冊を自ら解説しています。気になった本をじっくり読めばさらに世界が広がります。
マルト書店/田中玲子/新潟県内で一箱古本市に出店しています。

あふれでたのはやさしさだった
寮美千子 西日本出版社
読むと涙があふれます。著者が担った奈良少年刑務所での「絵本と詩の教室」で少年達が行ったのは、絵本の朗読劇と、自分で詩を書いて発表し感想を言ってもらうということ。たったそれだけのことで彼らは劇的に変わりました。ひとり残らず。月1回の授業で6か月の間に。なぜそんな奇跡のようなことが起こるのか? 自分の気持ちを表現し相手に受けとめてもらう。しかもせかされたり無理強いされることなく待ってもらえ、評価されることもない中で。このことは問題を抱える少年達だけでなく誰にとっても大切で必要なことなのではと思いました。
えほんや なずな/スタッフ まちこ/新刊絵本を中心に中古本、雑貨も。いろいろなつながりが生まれる場でもあります。/茨城県つくば市竹園2‐4‐10村田ビル105
読むと涙があふれます。著者が担った奈良少年刑務所での「絵本と詩の教室」で少年達が行ったのは、絵本の朗読劇と、自分で詩を書いて発表し感想を言ってもらうということ。たったそれだけのことで彼らは劇的に変わりました。ひとり残らず。月1回の授業で6か月の間に。なぜそんな奇跡のようなことが起こるのか? 自分の気持ちを表現し相手に受けとめてもらう。しかもせかされたり無理強いされることなく待ってもらえ、評価されることもない中で。このことは問題を抱える少年達だけでなく誰にとっても大切で必要なことなのではと思いました。
えほんや なずな/スタッフ まちこ/新刊絵本を中心に中古本、雑貨も。いろいろなつながりが生まれる場でもあります。/茨城県つくば市竹園2‐4‐10村田ビル105

という、はなし
吉田篤弘 文 フジモトマサル 絵 筑摩書房
本を読むことの幸福感に満たされる絵物語。読書の魅力を伝えたい相手に贈りたい一冊。
ことのは文庫/Sagaway8/松戸市八柱のシェア本屋せんぱくBookbaseの店守(たなもり)の一人です。
本を読むことの幸福感に満たされる絵物語。読書の魅力を伝えたい相手に贈りたい一冊。
ことのは文庫/Sagaway8/松戸市八柱のシェア本屋せんぱくBookbaseの店守(たなもり)の一人です。

光景
川崎祐 赤々舎
『光景』は写真集である。僕は写真のことはよくわからない。しかし、この本は確かに良い本である。川崎裕は僕の住む滋賀県出身の写真家である。僕は川崎祐のことを知らなかった。ある日初めて来店されたお客様から、この本を一冊頂いた。地元出身の写真家で有名な賞を受賞したり、最終選考に残ったり、と活躍しているそうだ。それは僕でも知っているくらい有名な賞の名前だった。『光景』は家族と地元の風景を撮ったものだ。最初の印象は絶望と恐怖だった。なぜか救いようのない、負の感情ばかりを感じる写真だった。巻末には川崎裕自身の書いた短文が掲載されている。これを読むことで写真は意味を持ち、この本は完成する。完成した上で、何も解決しないし救わない。でも、それでいいのだと認めてもらえた気がした。日常はまだ続いている。
六月の水曜日/宇野爵/滋賀の片田舎で本のある暮らしを作っています。珈琲を淹れたり、服の販売をしたり、映画の上映会もやってます。
『光景』は写真集である。僕は写真のことはよくわからない。しかし、この本は確かに良い本である。川崎裕は僕の住む滋賀県出身の写真家である。僕は川崎祐のことを知らなかった。ある日初めて来店されたお客様から、この本を一冊頂いた。地元出身の写真家で有名な賞を受賞したり、最終選考に残ったり、と活躍しているそうだ。それは僕でも知っているくらい有名な賞の名前だった。『光景』は家族と地元の風景を撮ったものだ。最初の印象は絶望と恐怖だった。なぜか救いようのない、負の感情ばかりを感じる写真だった。巻末には川崎裕自身の書いた短文が掲載されている。これを読むことで写真は意味を持ち、この本は完成する。完成した上で、何も解決しないし救わない。でも、それでいいのだと認めてもらえた気がした。日常はまだ続いている。
六月の水曜日/宇野爵/滋賀の片田舎で本のある暮らしを作っています。珈琲を淹れたり、服の販売をしたり、映画の上映会もやってます。

夜明けの散策
フランソワーズ・アンブレ 著
藪崎利美 訳 人文書院
日が昇るその吐息で、金星が吹き消された。空は金色から薔薇色へ、さらに緑色が加わっていく。朝焼けは夜を追いやるのと同時に、眠らない私を柔らかく塗り潰す。一畳ぽっちのベランダにひとり。ふと視線をずらすと、新宿の影がぞくぞくと靄の奥に現れた。静かな変化を誰もが享受している。夜明けを積極的に迎える彼女の視線。これは、喧騒、苛立ちやしがらみを空白に変える書物だ。読後、その空白には非現実的だが確かな風景がきっと留まるだろう。
Bookwordrobe/清水涎/服を作る本屋です。bookwordrobeがブランドと建物のなまえ。
日が昇るその吐息で、金星が吹き消された。空は金色から薔薇色へ、さらに緑色が加わっていく。朝焼けは夜を追いやるのと同時に、眠らない私を柔らかく塗り潰す。一畳ぽっちのベランダにひとり。ふと視線をずらすと、新宿の影がぞくぞくと靄の奥に現れた。静かな変化を誰もが享受している。夜明けを積極的に迎える彼女の視線。これは、喧騒、苛立ちやしがらみを空白に変える書物だ。読後、その空白には非現実的だが確かな風景がきっと留まるだろう。
Bookwordrobe/清水涎/服を作る本屋です。bookwordrobeがブランドと建物のなまえ。

エリザベス・ブラックウェル 運命を切り開いた世界で最初の女性医師
東園子 絵 堀之内雅一・橋本葉子 著 集英社
2019年は伝記に夢中になった一年でした。なかでもエリザベス・ブラックウェルという世界で最初の女性医師の伝記はすごく印象的でした。「貧困・無知・不潔はもっとも重い症状の病気です。そしてさらに悪質な病気が女性に対する差別です。わたしはそれを治すためにここをつくったのです」ナイチンゲールと同じ時代を過ごし交流もあったブラックウェルの生涯。このシリーズはヘレン・ケラーで知られるサリバン先生の伝記もあり、読みごたえあるシリーズです。
親子絵本専門店NanuK/絵ノ本桃子/本屋が育つシェア本屋「せんぱくBookbase八柱店」店長。元学校司書。4月からはフリーの「学童司書」として活動。
2019年は伝記に夢中になった一年でした。なかでもエリザベス・ブラックウェルという世界で最初の女性医師の伝記はすごく印象的でした。「貧困・無知・不潔はもっとも重い症状の病気です。そしてさらに悪質な病気が女性に対する差別です。わたしはそれを治すためにここをつくったのです」ナイチンゲールと同じ時代を過ごし交流もあったブラックウェルの生涯。このシリーズはヘレン・ケラーで知られるサリバン先生の伝記もあり、読みごたえあるシリーズです。
親子絵本専門店NanuK/絵ノ本桃子/本屋が育つシェア本屋「せんぱくBookbase八柱店」店長。元学校司書。4月からはフリーの「学童司書」として活動。

生きなおす、ことば 書くことのちから ―横浜寿町から
大沢敏郎 太郎次郎社エディタス
貧しさや差別から学校に行けず、文字の読み書きを習得できないまま生きてきた人たち。そんな人を相手に著者は識字教室を34歳からつづけてきた。本書では、識字を通して出会った人を回想し、本人に書いてもらった作文が紹介される。文字を奪い返した人たちは、すさまじい集中力で紙に言葉を書きつける。記憶や感情があふれだした「なま身の人間の生の歴史」に、思わず涙がでた。「書く」ってこんなにも自分がさらけだされるものなのか……言葉に対する意識を改めさせられるような本でした。
おむすびブックス/梅田梓/北軽井沢にある「ルオムの森」洋館の一室で営業している本屋です。
貧しさや差別から学校に行けず、文字の読み書きを習得できないまま生きてきた人たち。そんな人を相手に著者は識字教室を34歳からつづけてきた。本書では、識字を通して出会った人を回想し、本人に書いてもらった作文が紹介される。文字を奪い返した人たちは、すさまじい集中力で紙に言葉を書きつける。記憶や感情があふれだした「なま身の人間の生の歴史」に、思わず涙がでた。「書く」ってこんなにも自分がさらけだされるものなのか……言葉に対する意識を改めさせられるような本でした。
おむすびブックス/梅田梓/北軽井沢にある「ルオムの森」洋館の一室で営業している本屋です。

語るためのグリム童話
小澤俊夫 監訳 小澤昔ばなし研究所 再話 小峰書店
2019年1月から、毎月最終日曜日に「月イチグリム」と題して、この本から2~3編ずつ音読する会を開催。子どもの頃に親しんだ抄訳とは、味わいや読後感が異なることや、耳から聞いて、明快に、印象深く、物語が聞き手に伝わるのを感じています。人生の道しるべになるような作品もあります。声で伝える、口承文芸の奥深さを、お手軽に。ご家庭にワンセットいかがでしょうか?
えほんや なずな/店主 いちみちゃん/つくばで開業して4年目。おばちゃんたちがにぎやかに、毎日が文化祭。小さく清く花咲くえほんやです。
2019年1月から、毎月最終日曜日に「月イチグリム」と題して、この本から2~3編ずつ音読する会を開催。子どもの頃に親しんだ抄訳とは、味わいや読後感が異なることや、耳から聞いて、明快に、印象深く、物語が聞き手に伝わるのを感じています。人生の道しるべになるような作品もあります。声で伝える、口承文芸の奥深さを、お手軽に。ご家庭にワンセットいかがでしょうか?
えほんや なずな/店主 いちみちゃん/つくばで開業して4年目。おばちゃんたちがにぎやかに、毎日が文化祭。小さく清く花咲くえほんやです。

どこにでもあるどこかになる前に。~富山見聞逡巡記~
藤井聡子、里山社
「何者にもなれなかった」。この言葉が、本書のなかで何度か出てくる。文化に憧れる人間の多くが、小説家とか映画監督とか、とにかく「何者か」になろうとし、そしてそのうちの殆どが、その夢に破れる。だが「何者か」になれなくたって人生は続くのだ、死なない限りは。本書の著者藤井聡子は、目標に向かって東京で悪戦苦闘した二十代を終え、三十歳を目前に故郷富山にUターンする。そこで目の当たりにした地方のリアルのなかで、彼女は少しずつ変わっていく。「何者にもなれなかった」人生は、決して行き止まりなんかじゃない。目の前に広がる世界にしっかりと目を見開けば、人はどこからでも成長していけることを、この本は教えてくれる。
早春書店/コメカ/2019年より、国分寺駅そばで営業している本屋です。古本も新刊もどちらも扱っています。
「何者にもなれなかった」。この言葉が、本書のなかで何度か出てくる。文化に憧れる人間の多くが、小説家とか映画監督とか、とにかく「何者か」になろうとし、そしてそのうちの殆どが、その夢に破れる。だが「何者か」になれなくたって人生は続くのだ、死なない限りは。本書の著者藤井聡子は、目標に向かって東京で悪戦苦闘した二十代を終え、三十歳を目前に故郷富山にUターンする。そこで目の当たりにした地方のリアルのなかで、彼女は少しずつ変わっていく。「何者にもなれなかった」人生は、決して行き止まりなんかじゃない。目の前に広がる世界にしっかりと目を見開けば、人はどこからでも成長していけることを、この本は教えてくれる。
早春書店/コメカ/2019年より、国分寺駅そばで営業している本屋です。古本も新刊もどちらも扱っています。

職人の手
山﨑真由子、アノニマ・スタジオ
「自分がいい仕事をしているかどうかは、職人なら誰でもわかる。それをおざなりにして、数だけを競うような、死んだ仕事はしたくない。」この本で紹介されている職人のお一人、傘づくり一筋70年小椚さんの言葉である。本書では、30~90代の職人16人のものづくりの背景や生き様が綴られている。取材を重ねた著者曰く、職人さんたちは一様に「なにもしていない、ただ毎日続けているだけ」と。代を継いだ人、新しくはじめた人、立場はそれぞれであるが〝続ける〟という事がどれだけ大変か……。自らの仕事を見つめ直し、一日一日を積み重ね続けていくことの大切さに立ち返りたくなる。
石堂書店/石堂智之/横浜・妙蓮寺の商店街内で営む街の本屋。創業70年を期に今年2月「本屋の二階」と向いに「本屋生活綴方」をOPEN。
「自分がいい仕事をしているかどうかは、職人なら誰でもわかる。それをおざなりにして、数だけを競うような、死んだ仕事はしたくない。」この本で紹介されている職人のお一人、傘づくり一筋70年小椚さんの言葉である。本書では、30~90代の職人16人のものづくりの背景や生き様が綴られている。取材を重ねた著者曰く、職人さんたちは一様に「なにもしていない、ただ毎日続けているだけ」と。代を継いだ人、新しくはじめた人、立場はそれぞれであるが〝続ける〟という事がどれだけ大変か……。自らの仕事を見つめ直し、一日一日を積み重ね続けていくことの大切さに立ち返りたくなる。
石堂書店/石堂智之/横浜・妙蓮寺の商店街内で営む街の本屋。創業70年を期に今年2月「本屋の二階」と向いに「本屋生活綴方」をOPEN。

実像 広島の「ばっちゃん」中本忠子の真実
秋山千佳 KADOKAWA
人の「実像」など本当に知るべきことだろうか。本書を読んだ今となっては肯定したい。それはただスキャンダラスに過去を暴き出す所業のことにあらず、人が都合よく作り上げたイメージと真実との乖離を埋めていく作業のことである。広島のマザーテレサと呼ばれ、聖人視された一人の女性・中本忠子の「実像」を求める著者の旅の成果は、その善行の奥に潜む悲しみと人間性の核に触れ、中本忠子の生き方への真の理解を深めていくことに成功している。個人的に昨年最も感動した本。
ときわ書房志津ステーションビル店/日野剛広/千葉県佐倉市 京成電鉄志津駅前の本屋です。普通の本屋のつもりが脱線してアホなことばかりしています。
人の「実像」など本当に知るべきことだろうか。本書を読んだ今となっては肯定したい。それはただスキャンダラスに過去を暴き出す所業のことにあらず、人が都合よく作り上げたイメージと真実との乖離を埋めていく作業のことである。広島のマザーテレサと呼ばれ、聖人視された一人の女性・中本忠子の「実像」を求める著者の旅の成果は、その善行の奥に潜む悲しみと人間性の核に触れ、中本忠子の生き方への真の理解を深めていくことに成功している。個人的に昨年最も感動した本。
ときわ書房志津ステーションビル店/日野剛広/千葉県佐倉市 京成電鉄志津駅前の本屋です。普通の本屋のつもりが脱線してアホなことばかりしています。

水は海に向かって流れる
田島列島、講談社
これを読むと「デメリットがひとつもない! 逆に怪しい!」と不安になってしまうほどおもしろい。いやほんと。これマジで。食べログで星5つ、コメントも大絶賛しかない、みたいなお店はなんか胡散臭いですよね、サクラばっかなんじゃねーの? とか訝しみますよね。よーくわかります。でも大丈夫です。だから、ほんとにおもしろいの? どういうところがおもしろいとか具体的な推しポイントが一切書いてないよこの推薦文、大丈夫? とか思いながら読んでください。読後はあなたも「デメリットがひとつもない! 逆に怪しい!」と不安になりつつ誰かにオススメしてますから。
本屋lighthouse/関口竜平/千葉市幕張の本……小屋です。台風で屋根が飛びます。
これを読むと「デメリットがひとつもない! 逆に怪しい!」と不安になってしまうほどおもしろい。いやほんと。これマジで。食べログで星5つ、コメントも大絶賛しかない、みたいなお店はなんか胡散臭いですよね、サクラばっかなんじゃねーの? とか訝しみますよね。よーくわかります。でも大丈夫です。だから、ほんとにおもしろいの? どういうところがおもしろいとか具体的な推しポイントが一切書いてないよこの推薦文、大丈夫? とか思いながら読んでください。読後はあなたも「デメリットがひとつもない! 逆に怪しい!」と不安になりつつ誰かにオススメしてますから。
本屋lighthouse/関口竜平/千葉市幕張の本……小屋です。台風で屋根が飛びます。

急に具合が悪くなる
宮野真生子・磯野真穂、晶文社
女性の哲学者と人類学者の往復書簡。普段は哲学書を読まない人に手にとってほしい。命をかけてコトバを紡ぐことを考えさせられる。
いろどりのブーメラン/せんだ くみ/東京都文京区の小石川モノガタリ(ブックカフェ)で時々ひとつの本棚をお借りして新刊の本を販売しています。/東京都文京区小石川3丁目26 ‐ 10
女性の哲学者と人類学者の往復書簡。普段は哲学書を読まない人に手にとってほしい。命をかけてコトバを紡ぐことを考えさせられる。
いろどりのブーメラン/せんだ くみ/東京都文京区の小石川モノガタリ(ブックカフェ)で時々ひとつの本棚をお借りして新刊の本を販売しています。/東京都文京区小石川3丁目26 ‐ 10

サンライト
永井宏、夏葉社
「ネオ・フォークロア」は、美術家の永井宏さんによる「誰にでも表現はできる」という考え方。私はその言葉と出会い、自分のなかにある創造性に目を向ける大切さを知りました。永井さんは主に90~00年代に神奈川・葉山で活動され、生活に根ざした美しさを見つめた作品を幅広く制作。その傍ら、自身の営むギャラリーやワークショップで、様々な人々とその作品たちを巡り合わせました。『サンライト』は当時の文章を再編して出版された、「ネオ・フォークロア」のエッセンスが詰まった一冊です。いまこの時代に再度、永井さんの文章を届けて下さった夏葉社さんに感謝します。
一花書店/ナカムラユキ/一箱古本市で本を売っています。日常を彩る花のような本を取り扱います。
「ネオ・フォークロア」は、美術家の永井宏さんによる「誰にでも表現はできる」という考え方。私はその言葉と出会い、自分のなかにある創造性に目を向ける大切さを知りました。永井さんは主に90~00年代に神奈川・葉山で活動され、生活に根ざした美しさを見つめた作品を幅広く制作。その傍ら、自身の営むギャラリーやワークショップで、様々な人々とその作品たちを巡り合わせました。『サンライト』は当時の文章を再編して出版された、「ネオ・フォークロア」のエッセンスが詰まった一冊です。いまこの時代に再度、永井さんの文章を届けて下さった夏葉社さんに感謝します。
一花書店/ナカムラユキ/一箱古本市で本を売っています。日常を彩る花のような本を取り扱います。

神さまを待っている
畑野智美、文藝春秋
タイトルでは何の小説かわからなかった。帯にお金がないと書いてあって、それでもうまく 想像できずに読み始めたけれど、衝撃だった。自分の境遇も主人公・愛と紙一重と言えなくも ない。頼る人がいても、頼る勇気がないかもしれないと思ったから。お金に対する知識、 ちょっとしたことで陥る貧困、そこから抜け出すための方法。そういう現実を教えてくれる場 所ってどこ? 学校? 家庭? 友人? SNS? 本? どこからでもいいから身近に知るための何 かが必要だと思った。読み進めていくとわかってくるタイトルの意味。そこで新たに生まれ た、なぜこのタイトルなのかという疑問は最後で解けた。愛と同じように私も絶望の中にある 希望を探したい。
あかりbooks/岸田安見/吉祥寺のブックマンション59号室で間借り本屋をやっています。書 店員研修というイベントも定期的に開催!
タイトルでは何の小説かわからなかった。帯にお金がないと書いてあって、それでもうまく 想像できずに読み始めたけれど、衝撃だった。自分の境遇も主人公・愛と紙一重と言えなくも ない。頼る人がいても、頼る勇気がないかもしれないと思ったから。お金に対する知識、 ちょっとしたことで陥る貧困、そこから抜け出すための方法。そういう現実を教えてくれる場 所ってどこ? 学校? 家庭? 友人? SNS? 本? どこからでもいいから身近に知るための何 かが必要だと思った。読み進めていくとわかってくるタイトルの意味。そこで新たに生まれ た、なぜこのタイトルなのかという疑問は最後で解けた。愛と同じように私も絶望の中にある 希望を探したい。
あかりbooks/岸田安見/吉祥寺のブックマンション59号室で間借り本屋をやっています。書 店員研修というイベントも定期的に開催!

百花
川村元気 文藝春秋
いつか訪れるその日のことを考えるきっかけをくれた一冊です。私はこの作品のことをこれからもずっと考えて生きていくのだと思います。
うさぎや自治医大店/江頭杏奈/栃木県の自治医大駅前にあるお店です。わくわくするお店作りを目指しています。本の光を灯し続ける存在でありたい。/栃木県下野市医大前3‐1‐1
いつか訪れるその日のことを考えるきっかけをくれた一冊です。私はこの作品のことをこれからもずっと考えて生きていくのだと思います。
うさぎや自治医大店/江頭杏奈/栃木県の自治医大駅前にあるお店です。わくわくするお店作りを目指しています。本の光を灯し続ける存在でありたい。/栃木県下野市医大前3‐1‐1

図書室
岸政彦 新潮社
小学生のときに隣の席だった男の子の優しい顔を思い出しました。何を話したなんて全然覚えていない。ただ覚えている優しい顔。その子はきっと私の初恋だったと思う。10歳でなくなったその子は、私の中でいつまでも10歳のまま生きています。誰だって、想い出が心の中にあり、その想い出の繋がりで人は生きているんですね。そんなことを思い出させてくれる本です。
向文堂書店/やしま/創業40年の街の小さな本屋さん/大阪府堺市堺区向陵東町2‐7‐9
小学生のときに隣の席だった男の子の優しい顔を思い出しました。何を話したなんて全然覚えていない。ただ覚えている優しい顔。その子はきっと私の初恋だったと思う。10歳でなくなったその子は、私の中でいつまでも10歳のまま生きています。誰だって、想い出が心の中にあり、その想い出の繋がりで人は生きているんですね。そんなことを思い出させてくれる本です。
向文堂書店/やしま/創業40年の街の小さな本屋さん/大阪府堺市堺区向陵東町2‐7‐9

ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集
斉藤倫 文 高野文子 絵 福音館書店
わからないものを、わからないままでも、好きでいて良い。そこらにある素朴な疑問を抱えて、家を訪れる小学生の「きみ」に、おじさんの「ぼく」はこんな詩があるよといって今日も本を差しだす。たとえば、雨の降る音や枝豆の茹で加減について、膝を突き合わして考えながら、詩の自由な楽しみかたを学んでいく。まど・みちお、長田弘、萩原朔太郎、物語のなかで紹介される詩の味わいも確かなものだ。何より、子供と大人がちゃぶ台を囲んで関わり合う姿に、自分にとっての未来、理想を見た。2019年、たくさんの人に贈った本。
恵文社一乗寺店/鎌田裕樹/本にまつわるあれこれのお店。本、生活雑貨、ギャラリー、イベント、喫茶など、それぞれの楽しみかたを。
わからないものを、わからないままでも、好きでいて良い。そこらにある素朴な疑問を抱えて、家を訪れる小学生の「きみ」に、おじさんの「ぼく」はこんな詩があるよといって今日も本を差しだす。たとえば、雨の降る音や枝豆の茹で加減について、膝を突き合わして考えながら、詩の自由な楽しみかたを学んでいく。まど・みちお、長田弘、萩原朔太郎、物語のなかで紹介される詩の味わいも確かなものだ。何より、子供と大人がちゃぶ台を囲んで関わり合う姿に、自分にとっての未来、理想を見た。2019年、たくさんの人に贈った本。
恵文社一乗寺店/鎌田裕樹/本にまつわるあれこれのお店。本、生活雑貨、ギャラリー、イベント、喫茶など、それぞれの楽しみかたを。

国宝のお医者さん
芳井アキ KADOKAWA
自分が住む場所以外の本屋さんに行ったら、その地域にゆかりのある本が並んでいるのを見るのが、好きです。この本と出会ったのは、奈良県の啓林堂書店。「文化財の修復」をテーマにした、奈良が舞台の漫画です。「形あるものはいつか壊れる」とは言うけれど。それでも守りたいものがあって。大事に大事に、そうっと丁寧に、ひたむきに。文化財を守り続けていく人々の思いに触れることが出来る作品です。ちなみに生粋の奈良県民はよく「奈良には何もない」と言うんです。あるのに。こんなにあるのに。奈良が、いえ、日本が、世界が。何百年も受け継いできた「文化」とは。魅力的な主人公たちと一緒に考えたいです。
こもりくブックセンター/みろくや(管理人)/奈良県桜井市初瀬の空き家。いつか〝本の場〟にしたくて管理人・センタ長の2人で地味に活動中。
自分が住む場所以外の本屋さんに行ったら、その地域にゆかりのある本が並んでいるのを見るのが、好きです。この本と出会ったのは、奈良県の啓林堂書店。「文化財の修復」をテーマにした、奈良が舞台の漫画です。「形あるものはいつか壊れる」とは言うけれど。それでも守りたいものがあって。大事に大事に、そうっと丁寧に、ひたむきに。文化財を守り続けていく人々の思いに触れることが出来る作品です。ちなみに生粋の奈良県民はよく「奈良には何もない」と言うんです。あるのに。こんなにあるのに。奈良が、いえ、日本が、世界が。何百年も受け継いできた「文化」とは。魅力的な主人公たちと一緒に考えたいです。
こもりくブックセンター/みろくや(管理人)/奈良県桜井市初瀬の空き家。いつか〝本の場〟にしたくて管理人・センタ長の2人で地味に活動中。
*上記の一覧にある商品は、H.A.Bookstoreおよび双子のライオン堂でも購入いただけます。
H.A.Bookstoreのオンラインで購入する。
双子のライオン堂のオンラインで購入する。(準備中)